大室佑介入門 私立大室美術館 2025・5・17 | 作成:佐藤敏宏 | |
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中央に立つのが早川琢也博士 2025年5月17日午後雨あがる |
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作品展開催中の沓沢佐知子さんの知り合いだと語る早川博士は、豊橋で生まれ、三重大学に入学し博士号を取得されたという。いまは大学内にある研究室で製油会社で製造した油の価値をさらに増すための研究の日々だという。三重大学在籍当時から地域振興サークルに所属し休耕地を借り、米も作っているという。独身生活なので家事はなんでも自分でこなす、頼もしい男性だ。 ■ 早川琢也博士に聞く (原さんと三重大の地域振興サークルで活動中) わいわいがやがや、雨があがり来館者が多くなってきた。 佐藤:今日は来館者に話を聞かせてもらってます。座ってください、お菓子もありますので、どうぞ。昨日来て今日は朝から大室美術館を体験しています。いきなりですが、今日開催の企画展はどうですか。 早川:私は沓沢さんにも何回かお会いしたことがあるんです。今までの展示のなかで、ド素人に対してはすごいとっつきやすい作品ですね。自然が好きで動物が好きなんです。で、この近くの地域で三重大学の時から地域振興サークルにずっと原さんと二人で地域に入ってまして、イノシシとか鹿とか大好きだったんです。 佐藤:地域振興とイノシシ関係あるんですか。 早川:獣害あるので、狩猟をやっている友人もいまして。 佐藤:ジビエ料理を喰らってたんですか! 早川:ずっと喰ってました。 佐藤:鹿も食うんですか。 早川:動物は全部食べます。 佐藤:そりゃー!肉に不自由しないね。大室庭園美術館の中を鹿が行列つくり歩いていく、と聞きました。 早川:鹿だけですね。 佐藤:え、そうなんだ。狩猟しちゃいけないの? 早川:ここは私有地なので、見えない場所で罠掛けても、鹿はOKなんですよ。道路に面しちゃって見えちゃうとダメなんです。 佐藤:デリケートなルールも知っているんですね、それは民間ルールなんですか。 早川:全国的に狩猟免許あるので、私は持ってないですが、友人が銃を持ってプロやっているんです。 佐藤:撃たれないようにしてくださいね。 早川:そうなんですよ、下手に山に入ると。 佐藤:ズドーンですね。イノシシや鹿に見間違えられないようにしてくださいね。 早川:さっき、ここキツネ歩いてましたよ。 佐藤:え、キツネでてましたか!地域振興と狩猟のコラボか・・・いいね、そういうのがあるんだと知りませんでした。 早川:そこにずっと入っていて、動物とも付き合って、山羊を飼ってたりしてました。「山羊と鹿」展示されているので、今日はいままでのものではとっつきやすい作品です。 佐藤:もともとの生まれはどこだったですか。 早川:愛知県の豊橋です。 佐藤:行ったことある。 早川:田舎に。 佐藤:田舎だと思わなかったです。 早川:けっこう田舎ですよ。ちょっと離れればここと同じようです。 佐藤:豊川から二つ浜松よりの二川駅そばに、川合健二さんの家、ドラム缶ハウスがあるよ。 早川:二川宿がありますね。 佐藤:今は誰かが買い取ったのかな、高級宿泊施設にかわってます。 早川:私の実家からは二川駅までは20分も掛からないです。 佐藤:ちかいね、日本初のドラム缶ハウスなので全国見回しても珍しいですから観にいってください。原さん検索して見せてあげてください。 原:コールゲート・ハウスですよね。 佐藤:これこれ。 早川:は・・ぁ〜???。 佐藤:脱線しました、今度ドライブして観に行ってください。早川さんは温かい天国のような場所、豊橋で育ったんですね。 早川:豊橋は雪もあまり降らないです。 佐藤:早川さんの名刺をいただきました、油製造して売っているから凄いですね。 原:そこの研究員です。 早川:私は直接製造はしてないんですよ、大学の研究みたいなことをしてます。 佐藤:役に立たない仕事やってて、いい人生じゃないですか。 早川:本当にそうです。馬鹿にされ。 佐藤:役に立つか分からない、それを研究するのが重要です。会社も開発に投資しろ・・って言われるんですか 早川:開発をしたものに対して、さらに価値をだすような研究をしています。 佐藤:そうですか、もう何年研究されているんですか。 早川:今年で7年目ですね。 佐藤:内部留保して貯めこまず研究もしている、いいじゃないですか。地域振興と油づくりはどういう関係なんですか。 早川:関係ないんです。私が三重大でずっと全行程を終えて会社に入ったので。 佐藤:名刺をみると、博士号をもっているということですか。 早川:持ってます。 佐藤:お〜ドクターじゃないですか、すげい人、来館しちゃったじゃん。ドクターと言えば役に立たない、と言われやすい。 早川:日本では役に立たない(笑) 佐藤:たしかに日本の企業は研究に投資せず、製造にもせず、固まってますからね。何の分野でも専門の研究者はそう扱いされる感じですよね。でも一人で分かってニヤニヤしてて、周りの人は誰もなにしているのか分からない・・・とういう人種が博士ですよね。 早川:そういう世界です。 佐藤:会社の研究所に雇われて研究員しているんだ、と。 早川:私は研究系なので芸術はまったくです。 佐藤:だから研究者になるんでしょう、芸術的に研究されても会社は困る(笑 早川:そうですよね。 佐藤:芸術は科学にはならないから。言語と芸術の解明も研究している人いるのかな、近頃理屈でつくる藝術家もいるかな、絶滅しちゃったかもです。俺、日々料理してますけど、油もいろいろ種類が多くてわかりませんね。キャノラー油は油なんですか。 早川:キャノラー油は菜種油ですね。菜種油でもキャノラー種という菜種の種類で作るとキャノラー油になります。 佐藤:原油から作っているのか、と思って買った事なかったです(笑)。 早川:普通に植物の種から製造しビタミンEが凄く入っているので、さらっとしたサラダ油ですね。 佐藤:オリーブオイルがいい、と言う人もいるけど、やたらに高価だ。 早川:オリーブオイルは高いです! 佐藤:為替変動もあるけど、本当にいい油なんですか。 早川:オリーブオイルは植物油の中でも、成分的にいいものが入っている、体にいいものが入っているんです。 佐藤:さすが研究者、お勧めですか、博士も使っている? 早川:でも、あとは風味ですよ。オリーブオイルは風味が出るので、そっちで際立っているんです。 佐藤:最近は米油もスーパーに並んでます。血糖血が高くなるとか無いんでしょうか。 早川:ないです。むしろ下げる方に効果がある油のほうです。米油は米糠から採っているので、昔あった脚気とかは防げる成分が入っているんで、健康にはいい、というイメージはかなりありますね、でも高いですよね。 佐藤:オリーブオイルの値上がり凄いから、油に対しての値段感覚は鈍りました。 早川:鈍っちゃいますよね!菜種油に比べると米油は高いかな。 佐藤:倍ぐらいでしょうか、そこまでいかないか・・・。福島ではえごま油の宣伝しています。 早川:えごま油はどちらかというと魚油に近いのでEPAとかGHAとかと近いのが入っているので、そういう処で体にいいといわれているんです。 佐藤:なるほど!今日はいい車に乗ったお客さん来ますね。客が来ないだろうから、客待ちの間ずっとおしゃべりしてられると思って来たんだけど、ワイワイしている暇がないですね。 原:雨があがり、晴れたらお客さん多くなりましたね。 佐藤:お酒は好きなんですか。 早川:私はあんまり呑まないんですよ。呑めるんですけど呑まない。 佐藤:そうなの! 早川:真っ赤にはなるんですけど、そこからずっと変わらず飲めます。父親と母親も酒は強いみたいです。ジュースの方がすきなんです(笑) 佐藤:陽射しさしてきていい感じになってきました。キャノラー油は菜種油なんで大丈夫なんだ。 早川:むかしから、戦前から菜種油、三重県は菜種を栽培していたんです。菜種油からはじまって、会社もそうなんです。菜種油は安いです、海外で原料として栽培されているんです。カナダとかのすごい広い畑で栽培しているのでコストが安くなるんですよ。 佐藤:日本は平で広大な農地は少ないから、生産コストが高くなるよね。一生研究員で終わるんですか、大学に呼ばれるんじゃないですか。 早川:今も三重大学の中に会社が研究室をもって、ずっと大学にまだいるんですよ。大学の教授とかはあまりうらやましい職業ではないですね。(笑) 佐藤:専門馬鹿の人生は面白くない(笑)んですか。三重大学のなかにある会社の研究室勤務だと。 早川:産学です 佐藤:年に何本か論文ださないといけないですね。 早川:はい、先日投稿したばかりです(笑)。毎年1本はでてますね、今回は会社が油といっても檜の油の論文です。 佐藤:檜チオールというやつですか。 早川:ヒノキチオールは日本には入ってないんです。檜製油の機能性なんですけども、肌に使うとヒアルロン酸が増進されることがあって、それをずっと今まで研究してて、メカニズムが分かったので、それをまとめて論文投稿したんです。 佐藤:凄いね、女性は大喜びする研究ですね。町のおばちゃん檜の皮を顔に貼りつけそうですね。(笑) 早川:本当にあるみたいで、韓国でも、そうじゃないか、と言われてたらしいです。 佐藤:赤ちゃんの肌のようにプリンプリンになるというものですよね。 早川:あれを塗るだけで細胞が勝手に作ってくれる、という効果がある。 佐藤:赤ちゃん肌にするために、おばあちゃんがたっぷりお金を顔に投資しているので、そりゃ売れそうな研究じゃないですか!檜から抽出するのは大変そうですね。地域振興サークルというのは日本中の大学にあるんですか。 早川:三重県は特に、隣の村が白山町上ノ村というところです。そこは地域の中で、一人村を発展させないと、今後すたれていくなと危機感を感じ、提携しませんかという方がいるんですよ。その方が学生を引き受けてくれて、私たちみたいにOB、OGになっても、まだお邪魔している 佐藤:いい奴いるんだ、白山町だね。 早川:そうなんですよ。上ノ村は日本の中でもかなり先進的なことをやっているので、いろんな所から視察に来るんですよ。獣害対策、学生を取り入れてうまく成功している例、それらがあって・・・学生を使って地域おこしをしているのはたくさんあるんです。県の職員とかが入ってると、県の職員が学生にお願いして何かやっている。私たちは自主的に学生の方から声かけて、村からも、じゃそういうことやろうか、自主的に物事をさせてもらえるのがあって、そういうシステムは珍しいということです。 佐藤:研究者としては理想の関係で実現!現地に入り村おこしできてしまうのだから、参加しちゃいますよね。いい研究しても地域の住民の方々から相手にしてもらえるとは限らない。学問が社会に役立つのを見せる体験できる。それであれば皆さん見学に来るでしょうね。 早川:兵庫県からも大型バス2台で視察でくるような所なんですよ、隣の上ノ村は。意外に地域振興策が成功しているんです。 佐藤:お金儲けにもなっているんですか。 早川:私たちはサークルで稲作もやっているんです。耕作放棄地を戻そうと。苗代はだしてもらうんです。出来たお米を売ってそれをサークル費として自分たちで活動費に回しているんです。寄付金が無くっても学生たちだけでうまく回ってしまっているんです。 佐藤:去年から米価倍になっているから、サークル費余っちゃうね。 早川:学生たちの米は凄い安くって、30kgで1万円ぐらいなんですよ。利益なしで売っても8000円ぐらいでした。 佐藤:原発事故前は実家の米くってました、安かったんですけど、事故後は田に放射能積もって稲作してない。小学校は閉校になっちゃいました。今は高い米を買って食ってます。東電から米代の補填はありません。大室さんも田んぼをもっていて、その米を食べているそうです。土鍋で焚いてるからうまい!で、米、くいねー(笑 早川:私たちも自分たちで稲作やっているので、値段はOB、OG、ともに気にせず食べてますね。自分たちの食べる分だけを作っているんです。外部にも売らないです。 佐藤:米の心配しなくて、いい研究者ですね。海の研究している研究者と連携すれば無敵ですね。 早川:三重県は自然が豊ですから。 佐藤:それはいいね、豊橋から三重に移住しちゃうよね。早川博士は掃除洗濯など家事もするんですか。 早川:一人暮らし長かったので全部!自分でします。 佐藤:亭主元気で家事育児する、世はかわりましたね。 日が差してくると屋外なので陽射しがあれば刻々と方向が変わるし、天然の中の庭園美術館の良さが今日は満喫できますね。 名刺を頂戴している。 佐藤:国立大学の名前も入っているので、信頼度爆上がりですよ。ドクター持っていると世界中で通用するから。 早川:日本では信頼されないんですよ。外国に行ったらもうドクターです。 佐藤:それでも日本がいいですか。 早川:日本はドクターに対しては(尊敬すくない) 佐藤:会社中心主義で社会を作っている。早川さんは会社員だけど三重大学に研究室あって研究生活している。会社員とも違う、どちらでもないからいいよね。使い分ければいいよね。 |
音 450 |
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早川:どちらの立場もあるんです。本社にはそんなに行かないです。毎日三重大学に行って研究してます。 佐藤:朝から晩まで制作していると同じですね。 早川:三重大学は獣医学部と何が無いんだったかな・・・。三重大学は総合大学なので、建築と工学と医学部と、生物と農学部と人文と教育と、全部、同じ場所にあるんです。 佐藤:いきなりですが、兄弟は何人いるですか 早川:一人っ子です。好きな事やれって感じで育ちました。三重県に来たのも、近いからいいんじゃない、って感じです。 佐藤:直線距離で近いですよね。今は定期船運航してないんですか。 早川:鳥羽から渥美半島の方に運航してます。 佐藤:名古屋経由だと距離はありますよね。 早川:いい道ができたので、下道でも早いです。 雨があがり、来館者がふえだした。下屋にいては入館しにくいだろうと思い。聞き取りは突然お仕舞にした。 |
![]() 早川博士は大室庭園美術館で、鹿が踏みこんで造った獣道を通るキツネを見たと語った。 1982、クリストが上野公園内に制作した「包まれた遊歩道」という図録を思い出した。 |
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中谷ミチコさんのアトリエを体験するに続く |
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