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ことば悦覧録

  川勝真一さん 2017年1月28日 京都市内にて

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 その02 

川勝:うーん。どうでしょうね、ロールモデルを明確に意識している感じはないですね。
佐藤:そういう話を聞くと重源を思いだしますね私は。だいぶ昔の坊さんですけど
川勝:大仏を作った。 お金集めてね

佐藤:周防の方の現場まで出向き、大木を伐り出すために大木探しに懸賞金をかけたり、その作業に当たる人々のためにサウナ風呂をつくったり。癒す施設は今でも残っている。淀川から奈良まで大木を運ぶために牛を集めたり、布教したり。再興の全体をマネージメントした凄業師。
 社会のあらゆる人々を参加させ お金をいただき事業を成功させた。それが建築家だなーと。

設計して監理する仕事でおしまいではない

川勝:それをやっている人はたくさん居ると思うので。もう少し全体的に建築というのを豊にしていくには。重源がやった木を伐るところからみたいな、そういうところもフィールドとしてみてい必要がある。

 それが結果的に、裾野が広がると山も高くできるじゃないですか。いくら高くしようと思っても土台が小さいと、崩れるんで。土台を広げる人も要るよねと。

 それだけだと低くなるので、作家的に高い山を作っていく人も要ると思うんですけど。

 その両方がちゃんとある状況の方が、楽しい町ができるんじゃないかと。山を作る方じゃなくって裾野を広げるってまでは行かないんですけど。どういう広げ方があるかということを。まずはいろいろ展覧会をやったり、メディアで発信したり。
 実際に仕事を受けたときにはそういう意識で関わったりして。

 そういう意味でリサーチ・アーキテクチャル・ドメインというRADっていう名称なんですけど。建築的な領域を掘り出す意識でこれまでいろいろと仕事してきた。

 
佐藤:紙媒体で活躍する人たちはWEB媒体が盛んになって紙情報が売れなくなって、活動の場が少なくなって来た。で会員を集めたり寄付を募ったりして支援を頂きながら活動する姿になってきている。情報の乗り物が変わったんでそうなっている。建築の情報を加工し裾野広げても、活動資金というガソリンが無いのではない生きていけない。財政難もあるし、経済が縮小しているので色々な領域で同じような問題が起きている。自前で活動資金を集めるという課題があると思いますが、その当たりはどうでしょうか

川勝:最初は若かったというか、かなり自腹プロジェクトですよね。夜寝なくってもっていう感じでした。徐々に仕事をもらえるようになって。文脈はすこし違うですけど、自腹プロジェクトから、だんだん「こういうのあるけどやってみない」とか。「誰に頼んでいいのかわかんないけど、建物を建てるわけじゃないし、でも建物のことだし、建築のことだから」ということで話が来たりとかして。予算が付いているものが増えてきて、ほぼそれでやれているような状況です。

佐藤:試行錯誤しながら、生活ができるようになるまでになって来ていると。仲間も生きていけるようになっていけばいいなーと
川勝:そうですね、今は4人です
佐藤:川勝さんふうな行為に対してお金を支払う仕組みが無いですよね、建築士は図面を書いて監理して、お金をいただける、設計の仕事は独占できちゃう、国家的制度がある。巷で川勝さんふうな建築のすそ野を広げるための活動にはお金を支払う仕組みがない。支払う者だってどうして、どんな理由で払ったらいいのか分からないですよね 謝礼じゃー変だしね

川勝そうですよね。僕らも単価が分からないんで。「見積もりを書いて」とは言われるんですが。「わからねーなー」となりますよね。だいたいこれぐらいの時間だからとか、出すしかない。あとは決まっているのが多いですけどね。「お金これだけしか無いけど、これで」みたいな話が多いので。
佐藤:出版のための活動なので お金を出そうというのはわかるが、川勝さんふう活動にお金がでるというのは聞き取り中では初耳かもしれないなー。それは新しい出来事のように思えますが。でもそうでなければいけないよね、とも思う

川勝ちゃんと仕事として受けているんです
佐藤:素晴らしいじゃないですか
川勝アート系の人とのつながりが強かったので、芸術センターとか、そういう所で建築に関するワークショップを作ってくれとかが 多かったりして。一般の人を巻き込んで、実際に参加者が空間を作っていく実践ということをコーディネートするという。空間を作ったり変えていったりする経験が無い人に、「こうしたらいいんじゃないの」とちょっと導入をお手伝いするようなかたちでやれたらと思って。

佐藤:映画だと観客は監督に直接お金を支払わない、川勝さんが作りだした情報や行為は目に見えない成果物なのでアウトプットしてお金に換えるのはなかなかし難いですよね。
川勝そうですね。そういうことじゃないですね。

佐藤:そのあたりは今後どのように変わっていくのか興味深いですね
川勝:大きかったのは、2012年ぐらいに町家の改修。京都市がハップスHAPS)という若手の芸術家支援の活動をしていて。その事務所をマンションの中に在ったんですけど。どうしても町中に持ちたいという話で。
 そこはアーテスト支援するところだから、建物を直したりする予算が市からおりないので。実質的に300万ぐらいで、1棟全部改修しないといけないっていう話があって。 「どうしたらできるのか」と、相談を受けて。「ワークショップでやりましょうと」言って実施したのが2012年ぐらいです。


 (絵:RADサイト  HAPS BASE WORKSHOP より )

 建物とか空間に人を巻き込んでやると。今だとたくさんありますけど。当時は無かったので色々試行錯誤して。どうやったら共同作業みたいなものが上手くいくのかと。作業を小割にしたりとか。専門家を入れたりとか。それは面白かったですね。

、和紙を貼りたいという要望があったんです。呼吸できるようにしたいので自然素材で いきたいと。ボンドとかだと固まるのでだめじゃないですか。どうするかということで「糊がいいんじゃないか」と。
 大工さんに相談したら、「そんなことやってないから」と言われ。凄いお金の見積もりが来たんです。実際に問い合わせたら福井の方で布海苔が固まりが何千円かで買えて。それを鍋で煮て、糊を作って貼れば、5000円ぐらいでできるぞみたいな。アクセスする経路に入ると豊かな物が、違ったお金の価値で交換できる。建物の作り方も色々なアクセスの仕方があるんだなというのがあった。

佐藤:一般的に使える技術だけの物流になってるけど、昔の素材に対しての物流が無いんだと。ネットで調べるんですか
川勝ネットで調べましたね

佐藤:ネットもいい点もあるんだね。前だったら法外な値段になってあきらめるような事態もあったんだろうと。面白いと思ったり、モチベーションが上がったり、自己評価でもいいですけど 建築の世界に生きていると川勝さんに対して色々建築に対する川勝ふう支援活動してても、誰も「ありがとうございます」っては言ってくれないと思うんだけど

川勝ふふふふ
佐藤:川勝さんに向かって建築家がお礼を言ったら稀なる建築家だど。一人で頑張っているふうになりやすい、既存媒体はそちらに向かいがちで。川勝さん系活動の情報が出ない状況もあります。そういう中で再度、川勝さんの行為や活動の動機付けになっているのは、どんな感じですか。

川勝:一つは、そういう場面に専門家じゃない人が入ったときに、どういう作り方があるのか、それによって建築のアウトプットというか、仕上がりが変わってくるかという事を知りたい。どれだけそこに人が入って来るポテンシャルが有るのか。建築に関わるっていうことがどれだけ社会的に魅力的なものかみたいな。それを知りたかったんですけど。

 やってみると、そのへんは 手応えはありまして。そうすると そこで終わりじゃなくって、そこを運営している人たちも建物を直して使っていく事が当たり前になるので。その後もどんどん、僕らとは関係ない人たちと組んだりしてアップデートされていったりするんで。

 そういう事が起こるっていうことが分かったとか。

常連さんがその後もその活動に関わったりとか、京都に移住して来たりとか。何かが派生していくこともあった。

佐藤:京都をベースにして活動しているんですか 

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