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福島第一原子力発電所の事故によって起きている様々な問題を勉強し始めました 勉強過程の記録をつくってみます 暇な方はご活用ください
2011年7月27日 厚生労働関係の基本施策に関する件(放射線の健康への影響議事録
参考人
 01明石真言 02唐木英明 03長瀧重信 04沢田昭二 05児玉龍彦 06今中哲二 
質疑応答
 07山口和之(民主)    08吉野正芳(自民)  09坂口力(公明)
 10高橋千鶴子(共産11阿部知子(社会民主党・市民連合)12柿澤未途(みんなの党)

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○牧委員長 次に、高橋千鶴子さん。

高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 きょうは、六人の参考人の皆さん、本当にお忙しい中おいでをいただきまして、また貴重な御意見を賜りましたことを心からお礼を申し上げます。

全員に質問したいと思っているんですが、先ほど来そうであるように、時間の関係でなかなかたどり着かないかもしれませんが、その点は御容赦いただきたいと思います。

 きょう、まず最初に伺いたいのは、食品安全委員会の問題ですけれども、昨日、ワーキングチームが、通常の一般生活で受ける放射線量を除き、生涯の累積線量100ミリシーベルト以上で影響が見出されるという評価書を了承したということが報道をされました。

 私は、この食品安全委員会の食品安全基準の問題については、六月一日の本委員会で質問しております。これはあくまでも事故直後の、本当に緊急を要するということで暫定基準という形で食品の安全基準が示されたわけで、データも非常に不足していたことや、食品安全委員会の議論の中でも、例えば発がん性の問題、胎児への影響の問題、子供の内部被曝ですとか、あるいはウラン、プルトニウムなどの評価がないじゃないかということも議論があって、ワーキングチームが継続して検討されていた。ですから、非常に注目をしていたわけですけれども、正直、拍子抜けというような気がします。

 要するに、では生涯というのをどう受けとめたらいいか。それを一年に割ると結構厳しいじゃないかというふうな記事もあるんですけれども、人生半分過ぎた人がそれをどう見ればいいのかということですとか、実際に知りたいのは、個々の人たちが本当に普通の食生活をしていく中でどういう影響を見ればいいのかということが知りたいわけであって、食品安全委員会の今の到達、これをどう評価し生かすべきかということで、明石先生と唐木先生に伺いたいと思います。

明石参考人 昨日の100ミリシーベルトでございますが、私ども、実際現場で住民の方とお話をさせていただくチャンスが多いんですが、多分、意味を一〇〇%理解していただける状況ではないと私は思います。

 といいますのは、先ほども少し私のお話でも申し上げたんですが、内部被曝の線量について、どういう計算の仕方、どういう考え方をしているのかということをまず御理解していただく、それで外部被曝とミリシーベルトで比較した場合、リスクは同じだけれども、考え方が違う、計算の仕方も違うということをぜひ理解していただいて、その上で住民の方がいろいろな方々の御意見を伺うということをまずすることが私は一番重要で、そうでないと、また数字のために規制されたというような理解を住民にされてしまう。これは、数字のひとり歩きということで、一番怖いことになってしまうと思います。

 ぜひいろいろな機会を設けて、この数字の意味、それから体内被曝、体内汚染、食べ物からの被曝線量の数え方ということを十分理解していただくチャンスをまずつくる、そこから議論が始まるのではないかというふうに私は思っております。

唐木参考人 御質問がありましたように、昨日の、生涯の線量が100ミリシーベルトという食品安全委員会の答えにつきましては、戸惑っている方々がたくさんいらっしゃるだろうと思います。

 私は直接その審査には加わっておりませんが、食品安全委員会のお手伝いをしている一員としまして考えていることを申し上げますと、食品安全委員会の委員は、この短い期間に、放射線の健康影響に関する膨大な文献を調べました。我々が、食品安全委員会が知りたいことは、食品を介して摂取する放射線についての情報、これが食品安全委員会の使命です。しかし、調べてみると、食品を介した健康影響に関する文献はほとんどなかったということです。食品安全委員会というのは科学だけを根拠にして結論を出すところですので、データがないことを言うわけにはいかないということで、残念ながら、今回はそのような形になったということでございます。

 しかし、疫学調査そのほか、今までいろいろなお話がありましたように、百ミリシーベルト以下のリスクというのはあるけれども、それは極めて小さい、百ミリシーベルトでたばこの受動喫煙程度ということを考えると、それより小さいリスクであるということから、現在の5ミリシーベルトというのは極めて安全な値であるというのを前回出しております。同様に、前回の議論の中で、10ミリシーベルトでも安全であるということは出しております

 今回はそういった議論はもう前回やりましたので出ておりませんが、これから先は、厚生労働省がその生涯の100ミリシーベルトの内訳をどういうふうに食品に割り振っていくのか、そういう作業が始まるだろうというふうに思っております。


高橋(千)委員 なかなか難しい、答えが見つからない問題かなと思います。これを、しかし厚労省が基準に落とさなければならない。そして、その基準が目安になって出荷制限云々ということになるわけですから、それを行政が、我々がどう受けとめていくべきかということで、非常に難しいなと、ちょっと今お二人の御意見を伺っても、ではその次がどうなるかということで、非常に悩ましいところでございます。

 もし、ほかの先生方で、追加で御意見があれば伺いたいと思います。

唐木参考人 一言追加をさせていただきますと、福島の事故の直後に、暫定基準で5ミリシーベルトという基準をつくりました。その後、食品安全委員会で、5を10に変えてもいいのではないかというような議論が随分行われました。そのときに、それを非難するメールが山ほど参りました。やはり、けんかを始めてからルールを変えるというのはなかなか世間には理解されないだろう、そういう現実もあるだろうと思いますが、これは食品安全委員会の立場ではなくて、厚生労働省のお立場を私が推測してお話ししたことでございます。

沢田参考人 きのうの議論の結果、特に、子供たちにどういう影響があるかということについて触れていないということに対する不満がたくさんありました。そういう資料がないということでお答えになっていたようですけれども、私が承知していますのは、広島大学の原医研で、かなり丹念に、年齢別にいろいろな種類の晩発性障害についての死亡率を研究されています。早川さんたちが中心になってやったんですけれども、現在は、多分、そこにいらっしゃる方で、そのデータをもとにして、ちゃんと明らかにすれば、子供たちに対してどういう影響があるかということが年齢ごとにわかっていくような、そういうデータがそろっていると思いますので、それをぜひ委員会などでも検討していただければいいんじゃないかというふうに思います。

高橋(千)委員 ありがとうございました。

 逆に言えば、今回の事故が起きてから基準値を初めて検討しなければならなかったと。でも、本当であれば、今沢田先生もお話しされたように、この間の、原爆以来のいろいろな経験を通して、データをとってきた方たち、研究してきた方たちはたくさんいたわけですから、そうした英知を結集して、もっと早い時期にそうした基準についても検討しておくべきであったのではないかということは一つ言えるのかな、このように思っております。

 そこで、この食品安全委員会も、あるいは随分世間をお騒がせした校庭の20ミリシーベルトの問題なども、やはり土台にはICRPの基準があり、そしてさらにその土台には、やはり広島、長崎の原爆のデータということがあったのかなと思っております。

 どの先生方も、やはり、100ミリシーベルトを超えた場合ははっきりと関連性がわかるけれども、それ以下ではなかなかわからないと。しかし、ないわけではないということははっきりしていると思うんです。そのことと、もちろん少ない方がよいということもはっきりしているのではないかということで、やはり、きょうのお話を聞いて、もっともっと原爆の被爆の経験を詳細に学ぶべきではないかということを改めてお話をしたいなと思っています。

 それで、65年以上たった今日でも原爆症の申請はございます。また昨年は、一年間で5000人がこの認定が却下された、こういうこともございます。ですから、まだまだ、何年たってもやはり問題が起きてくるというこの放射線の障害という特異な性格ということをまず受けとめて、その上でのさまざまな議論が必要なんではないか、このように思います。

 直接この問題に取り組んでこられた沢田参考人と、被爆者と接して研究をされてきた長瀧先生にもぜひ伺いたいと思います。

長瀧参考人 私、昨日のことに関しましては、きょうの配付した資料の一番最後に書きましたけれども、やはり日本全体として総合的に考えなければいけない。例えば、食品についての規制値を出してしまいますと、先ほど御質問のありました、では一たん移転した方がまた戻るかどうかというときの規制値にまで響いてくるようなものでありますので、国として、食品だけでいきなり規制値を出してしまってということが必ずしもいいのかどうかということ。規制値を決めるためには、現地の人たちのこともやはり一番先に考えて、そして、むしろ日本の社会における条件のすべてを考えた上で基準値が出てくるというぐらいの方向でもいいのではないかなと。それほど自信を持ってこれぐらいだということを先に言えるだけの科学的な確実なデータはない、不確実である、その線で、やはり社会的なデータを、これはALARAの精神のとおりであります。

沢田参考人 私が先ほど報告の中で示したのは、実効的な被曝線量という意味で理解していただきたいんですね。主に放射性降下物の影響というのは内部被曝だと申し上げたんですけれども、外部被曝の方は測定ができるわけです。しかし、内部被曝の方はなかなか測定というのは難しくて、外部被曝と同じ影響を与える内部被曝線量という表現しか現在のところできないと思っています。

 例えばホール・ボディー・カウンターで内部被曝がわかるんだということで、今、セシウム137の出している放射線をはかっています。でも、実際にはかっているのは、セシウム137が崩壊するのはバリウム137の励起状態にベータ崩壊をするわけです。そうすると、最初のセシウム137による被曝はベータ線による内部被曝なわけですね。そして、そのバリウム137の励起状態がバリウム137の基底状態に落ちるときにガンマ線を放出するわけです。そのガンマ線をホール・ボディー・カウンターで測定しているわけですね。それで、そのガンマ線によって内部被曝の線量がわかるというふうに言われているんですけれども、最初の方のベータ崩壊によるすごく密度の高い内部被曝の影響というのははかられていないんですよね。

 ということを考えますと、ベータ崩壊の方ではすごく高い被曝影響を与えているはずなわけですけれども、残念ながら、国際放射線防護委員会なんかの採用している、ベータ線もガンマ線も、グレイという吸収線量に掛ける線質係数というのは両方とも一にしてあるわけですね。ガンマ線とベータ線が全く同じ被曝影響しか与えないという仮定をしているわけですけれども、これは、外部被曝によってガンマ線が体の中に入ってくる、それからベータ線が体の中に入ってきますけれども、ベータ線は余り体の中に入ってきませんから、悪性腫瘍とかいろいろなことを引き起こさないという影響がその中に入っているので、結局両方とも一になっているわけですけれども、内部被曝の場合はこれは全く違ってくるわけですね。だから、これを同じように適用するというのは科学的ではないということが私の先ほどの説明でもおわかりいただけたと思います。

 ということで、内部被曝についての評価を外部被曝と全く対等に考えていくというやり方は正しくないと思います。そういう研究をきちんとやっていこうとすると、これから福島で起こることと広島、長崎で起こったことをきちんと比べながら評価していくことがこれからますます大事になってくる。ということで、内部被曝については、かなり慎重に科学的に検討していかなきゃいけない、そういうことが今問われているんだというふうに思います。

高橋(千)委員 ありがとうございます。

 原爆症の認定訴訟の中でもこの内部被曝の問題がなかなか評価をされなかったこと、後からの入市被爆の問題ですとか、そうしたことをずっと議論する中で、先生がきょう紹介された貴重なデータを、本当に遠距離であっても放射性降下物による影響があったんだということがきょう御紹介されたと思いますし、また、そのことと今回の福島の第一原発の被曝との関係を、やはり共通性を見出しながら生かしていくべきだ、そういうお話だったかと思います。

 そこで、先ほど、時間の関係で、途中、一言で終わったと思うんですけれども、レスボス宣言の意義についてもう少し補足していただければと思います。

沢田参考人 レスボス宣言は、ヨーロッパ放射線リスク委員会というのが1998年だったと思いますけれどもスタートして、そして一貫して、国際放射線防護委員会のいろいろな放射線防護の基準というのが内部被曝の影響を十分考慮していないという批判を続けてきました。

 先ほど、私の資料の中に、医学的な疫学調査をやる場合には比較対照群をどこに設定するかというのが極めて重要なんですけれども、放射線影響研究所は、初期放射線を浴びていない遠距離被爆者や入市被爆者を比較対照群にずっと選んできたわけですね。それはおかしいのではないかということを疑問にされて、日本人平均と比較されました。すると、いろいろな、特に放射線の影響が強いと思われるがんの発症率や死亡率が高い、とりわけ発症率が高いということが示されました。しかし、被爆者の死亡率は日本人平均よりも低いということも明らかにされたわけですね。

 ということで、被爆者にそういうがんの発症率が高い、比較対照群にした遠距離被爆者や入市被爆者が日本人に比べてかなり高いということを先ほどの図で示したわけですけれども、そういうことをちゃんと研究しなかった放射線影響研究所の研究では、そういう一番大事な内部被曝の影響というのが抜け落ちてしまっているという問題があるわけですね。

 だから、私が注目して、先ほどから何度も評価しているのは、広島大学の原医研の研究は、広島県民の中の被爆者と広島県民全体を比較するということで研究されています。その中ですごくいろいろな情報がわかってきていますので、それを大いに参考にしていただいて、とりわけ遠距離の被爆者の場合は内部被曝の影響であるということがその中に含まれていますので、そういうことをきちんとして、内部被曝の影響を引き出すという努力を科学者が一致して一生懸命やっていかなきゃいけない、そういうときに今来ているんじゃないかというふうに思います。

高橋(千)委員 ありがとうございました。

 最後に、児玉参考人に伺いたいと思うんですけれども、まさしく、きょう内部被曝の問題が随分話題になりました。また、遠距離被爆ということも、今、沢田先生が大分指摘をされましたので、そういう観点でずっと除染作業もやっていらっしゃる先生から一言伺いたいと思います。

児玉参考人 私、放射線取扱者に1977年になりまして、1995年から放射線取扱主任として除染と規制にかかわっております

 それで、今まで、科学技術庁告示、平成12年から我々がやらされていたことを一つだけ御報告しておきます。

 それは、例えば、妊娠可能の女子については、第五条四号で、内部被曝を1ミリシーベルト以下にする、それから第六条第三号、妊娠中である女子の腹部表面については前条第四号に規定する期間につき2ミリシーベルト、これを規制されて、その規制を守るべく30年やってまいりました。

 ところが、福島原発の事故で、広島原爆の20個分の放射線がまき散らされた途端に、このような基準がすべてほごにされている

 先ほど、福島県の議員から、どのようにしたら安心かという御質問がありました。私は、安全に関しては、基準を決めたら、危機になったらそれを変えていく格好ではだめだと思います。今、ことしできないかもしれないけれども、来年までにその基準に持っていく、再来年までにはこうするということがなければ、住民が安心できるわけがないではありませんか。

 そのためには、最初から申し上げているとおり、広島原爆二十個分の、天然にないセシウム137をまき散らした東電政府の施策を反省し、これを減らすために全力をあげる以外に、安心できる解決などあり得ないのです。そのことを抜きにして、どこが安全だという議論を幾らやっても、国民は絶対信用しません。

高橋(千)委員 ありがとうございました。

 時間の関係で、今中先生にも聞きたかったんですけれども、申しわけありませんでした。

 しっかりと皆さんの発言を受けとめて、頑張っていきたいと思います。

 きょうは本当にありがとうございました。

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