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福島第一原子力発電所の事故によって起きている様々な問題を勉強し始めました 勉強過程の記録をつくってみます 暇な方はご活用ください
2011年7月27日 厚生労働関係の基本施策に関する件(放射線の健康への影響議事録
参考人
 01明石真言 02唐木英明 03長瀧重信 04沢田昭二 05児玉龍彦 06今中哲二 
質疑応答
 07山口和之(民主)    08吉野正芳(自民)  09坂口力(公明)
 10高橋千鶴子(共産11阿部知子(社会民主党・市民連合)12柿澤未途(みんなの党)

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○牧委員長 次に、阿部知子さん。

阿部委員 社会民主党・市民連合の阿部知子です。

 ただいまの日本は、第二次大戦の敗北以来の大きな危機にある。震災、津波、そして原子力発電所の事故という中で、国会の役割の重要性、各委員からも多々御指摘いただきました。

 きょう私は、皆さんのお話が大変充実したものであったゆえに、手短ですが、質問をさせていただきたいと思います。

 まず、明石先生と今中先生に伺います。

 明石先生は、今回の事故以降、非常に早期から、特に原子炉の事態収拾のために働く現場の皆さんの健康管理にも当たっておられる。私ども委員会で来週視察にも参りますが、今最も大切なことは何であるのか。

 私は、実は先々週、Jヴィレッジにも行ってきたんですけれども、一月に3000人くらいの働く労働者が来ておられて、その方たちが果たしてきちんと被曝管理されているのかどうか、正直なところ、私にはちょっと不安がございました。

 そこで、でも事故は収束させねばなりませんし、安全ということとこの収束ということに向けて、今例えば国会は何をなすべきか。今中先生にも、同じような被曝労働者のデータがございますので、御意見を伺いたいと思います。

明石参考人 まず、現在、原子力発電所の中で働いている人たちの一番重要なことは、当然のことながら、生命と、それから危険から回避できることと、放射線の防護です。

 まず、放射線の防護という観点からお話をしますと、外部被曝については、必ず個人線量計、それから現場での線量管理、空間線量率も含めた管理を徹底するということで、計画的な被曝線量で抑えるということは必要条件であります。

 一方、内部被曝に関しましては、防護、つまり、マスクそれからその他の防護衣を使うことで体内被曝はゼロに近づけるというか、もっと言ってしまえば、ゼロにしなければいけない。そういう管理をできる環境をつくる。つまり、暑くてマスクをつけていられない、それから防護衣を着ていては熱中症を起こすような、そういう環境をできるだけ回避する。

 つまり、労働条件や労働環境を改善する、その二つが、放射線の被曝をできるだけ下げるということの第一歩であるということ。

 それから、間接的には、先ほどお話ししました、もし体の調子が悪くなるような環境が続けば、たとえそんなに高い線量率のところでなくても、そこで倒れてしまえば被曝線量が高くなってしまう。ですから、働ける環境、それから快適に働ける環境をつくる。その二つを徹底することが不可欠であるし、そうでないと、今の事故の収束に向かうためには余計な時間がかかってしまうのではないかというふうに認識をしております。

今中参考人 今福島の現場で働いている皆さんのことですが、彼らの被曝というのは、今、きょう議論してきました一般住民の方々と違って、彼らの被曝線量は、いわば急性障害が問題になっている線量です

 ですから、一つの閾値といいますか、大体、我々の常識では、250ミリシーベルトを一度に浴びるということは、ある意味で、血液像なりなんなりに影響が出てくるだろうというレベルの被曝をしているわけですから、私自身思うのは、今あそこで働いている人たちのレジストリーをきっちりとして、何人か、まだよくつかめていないという方もいらっしゃるようなので、特別のレジストリーをつくって彼らの健康状態をきちっと定期的にフォローしていくというのが多分我々の責任だろうと思います。

阿部委員 ありがとうございます。

 引き続いて、牛のセシウム汚染を初めとして、けさでしたか、腐葉土にもやはりかなり高濃度のセシウムがあるということで、単に牛だけでなく、及ぼす影響は全食品にかかわってきていると思います。また、海への汚染もありますので、今後、魚への汚染ということも避けて通れないと思います。

 その中で、先ほど唐木参考人のお示しいただきました参考資料の中に、例えば牛についてですけれども、全量、全体、全個体検査や抜き取り検査はかなり困難というか不適切であるというような表現でありましたが、これも二週間ほど前、NHKスペシャルでやっておりましたベラルーシでの取り組みは、チェルノブイリ事故、二十五年たっても、各学校で子供たちのミルクや野菜の放射線レベルを点検するということでございました。

 やはり私は、ここまで食品汚染が広がってきた場合には、なるべく口に入る身近なところで検査するという体制、それがどこまで身近にやれるかはまたあると思いますが、そうした考え方に立つことが重要ではないかと思いますが、この点について唐木参考人と、あと、児玉参考人は先ほど、ラインの測定でずっとフォローしていくような技術も我が国の現状においては可能ではないかというふうなお話でしたので、もう少し御披瀝をいただきたい。おのおのお願いいたします。

唐木参考人 全頭検査ですが、簡単に、簡便に、短時間でできるのであれば、これはやった方がいいと思います。しかし、現実に、検査機器が、私が知っている限りでは、福島では6台しかない、一頭の肉をはかるのに一時間かかるというような状況で全部の検査を始めたら、今やっている野菜そのほかの検査ができなくなってしまう。そういったことも考えて、現実的にはなかなか難しいだろうというのが、現場の人たち、あるいは専門家の意見です。

 これをどうするのかというのは、消費者、あるいは政治が考えていただくことではないかというふうに思っております。

児玉参考人 今、恐らくやられているのは、かなり旧式なやり方なんですが、ゲルマニウム半導体というので、周囲を六センチぐらいの鉛で遮へいした中に物を置いてやるのがやられています。

 それで、今日は、半導体の検知器というのはかなり多数の種類が改良されておりまして、私が最先端研究支援でやっておりますのはPETという機械でやるのをやっているんですが、PETで検出するときには、内視鏡の先でも検出できるぐらいの感度の高いものを開発しております。

 そういうものを集めていって、今やられているのは、むしろイメージングに欠いている。ですから、ゲルマニウムの半導体というのは、スペクトラムを出して、長いスペクトラムを全部見るんですが、例えばセシウムに絞ってこの線量を見るのであれば、半導体検知器の検出感度が今ずっとよくなっていますから、画像型にすることが簡単にできています。

 例えばその画像型の一つのイメージみたいなのは、米軍から供与されてヘリコプターに乗って地上の汚染をやるのに、今はいろいろなところで、きょうあたりは茨城県をやっていると思いますが、検知器で地上を映すようなものがずっとやられております。

 それで、農産物をたくさんやろうとする場合には、ライン化したところで多数のものをできる仕組みをやらなくてはなりませんから、イメージングの技術を基礎にして半導体を集めたようなもののセンターをたくさんつくって、流れ作業的にたくさんやれるようにして、その中ではねるものをどんどんイメージで、画像上で、これが高いと出たらはねていくような仕組みを、これは既存の技術ですぐできますものですから、そういうものを全力を挙げてやっていただきたいと思っております。これを生産地にかなりのところでつくる必要があると思っています。

阿部委員 生産地に伺えば、果樹農園などでも同じような要望が出されますので、唐木参考人にもぜひ、学術会議はいろいろな意味で日本の知の集積点、クラスターですから、御尽力をいただきまして、私も、やはりここまで来たら、はかって安心するということを除いては、幾ら基準値をどうこう言っても、本当の意味で日本が元気になれないと思いますので、唐木参考人の果たしておられる役割も大きいと思いますから、また学術会議内でぜひ今のような御提案も御検討いただいて、また政府にも御助言をいただければありがたいと思います。

 引き続いて、いわゆる内部被曝、それも低線量内部被曝についてお伺いいたします。

 ICRPと、それから先ほど沢田先生がおっしゃいましたヨーロッパでのECRRとの主な違いは、この低線量持続被曝をどう考えるかということにあるのではないかと私なりに勉強して思っております。

 実は、これは科学者間の意見の差ではなくてそうした差を埋めていく作業が今必要で、ICRPは、確かに広島とかあるいはネバダ州での核実験の後に急激に広がったある放射線の被害が主で、それが晩発であろうと、そのとき広がったものが後々どうなるかということも含めて調べており、沢田先生がおっしゃったのはそうでなくて、降下物がたくさん広がったチェルノブイリ型ですね。すなわち福島型の場合に、内部被曝、晩発するであろうものをどう考えていくのかという御指摘です。

 私は、これは科学界としては何も国民に投げないで、ちゃんと論議をして、ここまでわかった、ここはこれからというふうにしないと、何だか、お母さんたちに任されて、いや、私は100ミリでいいわ、私は20ミリよとやるような世界の話ではないと正直言って思うのであります

 そこで、長瀧先生は、ずっと広島、長崎の問題からチェルノブイリも経て、やはり我が国でこの世界の第一人者であると思います。ICRPの経験を今度どう低線量持続被曝に結びつけていくか、ここについてのお考えと、沢田先生には、本当に御自身の研究にのっとって、特に消化管障害、すなわち下痢などの分布について、ベータ線の障害をきちんと描き出していただいて、本当に貴重な御研究と思います。これを、今度逆に世界に発信していくときに、ある種の知見として、対立を超えて、本当に共有できるために何をすればよいかということで、おのおのお伺いいたします。

長瀧参考人 最初に、医者の立場と、それから放影研の理事長だったという立場で御報告します。

 内部被曝の知識がないということが何度かここで話題になりましたけれども、我々が核医学として働く分野では、常に内部被曝を患者さんに投与しているわけですね。それも、しかもわかり切った、ちゃんと素性のわかった放射性物質を患者さんに決まった量を投与して何が起こるかということは十分経験がございますので、内部被曝の知識がないというのはちょっと、医者の立場からいうと十分にわかっている。

 例えば131にしましても、私は1950年代から患者さんに投与しておりますし、今のチェルノブイリの子供たちも、癌になった場合に、転移のために何億ベクレル、がんの治療ですから何億ベクレルの沃素131を一度に投与いたします。それでがんの治療にはなりますけれども、それ以外の臨床症状、影響はないということを、やはり一つの知識として、十分我々は内部被曝の知識があるということを申し上げます。

 それから、国際的なといいますのは、原爆の場合はこれしかありませんので、比較的、国際機関としてアクセプトされやすいということもございますけれども、逆に、そういう意味からいうと、いろいろな国際機関からの批判もございまして、今までの五十年間、そういう批判に耐えながらやってきた。また、内部被曝あるいは初期のフォールアウトに関してのデータも、私自身は放影研として、そのときのデータを確実に解釈していると思いますし、またそれを発表して、先ほど申しました国際機関、UNSCEAR等で認められているというふうに思います。

 ですから、さっき国際的にと言うときに、やはり科学的な確実な証拠、だれもが認める、科学者が認める証拠をつくって国際的に発表して、それを国際機関が認めて、国際機関の合意の中に入れるというのが科学者がやるべき仕事、任務であって、いきなり、まだそこまでいかないものを社会に直接、個人のレベルで発表するのは、社会に混乱をもたらすということで心配ではないかなと。これは私自身の意見というよりは、今のこの状況で、社会に対して科学者は非常な責任を持たなければいけない、そういう意味で申し上げます

沢田参考人 先ほど内部被曝の問題についてお話ししたんですけれども、内部被曝というのは極めて複雑なものなんですね。原爆だけではなくて今度の場合もそうですけれども、放射性の微粒子が5ミクロンよりも小さければ、鼻毛にひっかからないで肺の肺胞というところまで入ってきます。そして、一ミクロンよりも小さければ、その微粒子は肺胞の壁から血液の中に入ってくるわけです。そのときに、その微粒子がどういう性格の微粒子であるかによって振る舞いが変わってきます。

 その微粒子が水に溶けたり油に溶ける、そういう性質のものですと、分子や原子のレベルまで全部溶解して、血液の循環とともに体の中、全身を回っていくわけですね。特に、沃素なんかですと甲状腺に集まりやすいとか、ストロンチウムなんかだったら骨なんかに集まりやすい、それからセシウムですと筋肉に集まりやすいとか、それぞれの集まりやすい場所に移動していくわけです。そこで集積されます。沃素なんかですと、甲状腺に30%はそういう形で集積されるということがわかっているわけです。

 しかし、水に溶けない、そういう性質のものですと、その微粒子の中で多少壊れたりして小さくなる可能性もありますけれども、そういう小さな微粒子でも、一ミクロンでも、その中に何百万個という放射性の原子核が含まれています。それが循環している間に体の中にどこかに沈着しますと、その沈着した周辺の細胞に猛烈な放射線をずっと被曝させ続けて、その周辺の細胞が死ぬるということにつながっていくわけですね。

 これはホットスポット理論とかそういうことで言われているわけですけれども、国際放射線防護委員会は、こういうホットスポットの議論については否定的な見解をずっと持ち続けています。しかし、実際に例えば劣化ウランの、酸化ウランの微粒子が体の中に入ってくると、ウランはすごく半減期が長いですからそれほど影響はないはずですけれども、しかし、かなりその中に大量のウランの原子核が含まれているといろいろな影響を与えるということがだんだん最近になってわかってきています。

 だから、そういうふうに、内部被曝の問題というのはすごく複雑ですから、それを科学的にちゃんと議論していくということを放射線影響の研究者のレベルでやっていかなきゃいけないのが現在の状況ではないかと思うんですけれども、例えば私がそういう論文を書いて投稿しましても、これを認めると学会の中で大混乱が起こるからという政治的な理由で却下されるという状況が続いています。それはだから、これまでの放射線の影響の研究者たちが長い間考えてきた放射性降下物の影響は少ない、内部被曝の影響は少ない、外部被曝とそんなに違わないんだという思い込みはずっとありまして、そこから離れられないという状況が続いているのが現状だと思います。

 ですから、科学者の中で、私が育ってきた分野は素粒子論研究のグループで、湯川秀樹先生とか朝永先生とか坂田先生、そういう方々はすごく民主的で、一介の大学院生でもきちんとした議論をしていればそれに耳を傾けるという姿勢がありました。私は、学会の民主化というのは極めて重要だと思います。

 そういう意味で、この機会に、放射線の影響の研究者たちの学会が民主的にちゃんとそういうものを踏まえて、事実は何かということを国民の前に明らかにしていく、世界人類のために明らかにしていく、そういうことをやっていかなきゃいけない段階に今到達しているんじゃないかなというふうに思います。

阿部委員 私も、今先生が言っていただいたように、科学は謙虚にあらねばならないと思います。そして、先ほど児玉先生のお話で、チェルノブイリ膀胱炎と呼ばれるものが二十数年たって初めて疫学的にも有意に出てくるということを見ると、やはり、実は甲状腺がんも、子供の場合もそうでしたが、最初は否定されておりましたから、科学はいつも可能性を否定せずにきちんと向き合うと。

 最後に児玉先生に一つお願いしたいと思いますが、アイソトープセンター、これは全国にございますが、今回の除染に活躍させるために何が必要か。お願いします。

児玉参考人 五月に全国のアイソトープ総合センター会議というのがありまして、そこでいろいろ議論をしていたときに、文科省の放射線規制室の方がおっしゃっていたのは、福島原発由来のRIはRIではないと。我々は国民の健康に責任を持つという仕事をやっているのではなくて、法律に決められた放射線取扱者を規制することが仕事だというふうにおっしゃっていました

 ある面では私は非常に違和感を感じたんですが、もう一方では、例えば文科省の規制室の方は、従来の法律の規制に従ってやらざるを得ない。それで、高い線量のものが少量あるということに対応した法律体系はありますが、低い線量のものが膨大にあるという、それをどう除染していくかということに関する法律がほとんどなくて、今も汚泥問題その他、すべて問題になっているのはここであります

 しかしながら、現在の全国のアイソトープ総合センターや何かは旧来の法的規制のままで、例えば先ほどゲルマニウムの機械が足りないというお話がありましたが、そんなものは全国にたくさんあります。ところが、そこへの持ち込み、持ち込んだ廃棄物の引き取り、こういうのが法律的に全くない。だから、今も東大のアイソトープセンターでやっているのは全部違法行為だと申し上げました。この場合には、センター長である私と専任教官と事務主任の上で審査委員会を設けて、内部でチェックして、超法規行為を勝手にやっているというのが現状であります。

 それで、そういう法律を一刻も早く変えて、測定と除染というのにぜひ立ち上がっていただきたい。それなくして親の安心もないし、しかも、先ほどから長瀧先生たちがおっしゃっている原爆型の放射能の常識というのは、これは原発型の常識の場合には全く違います。

 それから、先ほど長瀧先生のおっしゃった一過性に核医学で治療をやるというのも、これも形式が違います。我々、例えば抗体にイットリウムをくっつけて打つと、ゼバリンという医薬がありますが、あれは一過性にもかなりの障害を起こしますが、それでもがん細胞をやっつけるためにいいからやっているということであって、正常者にこれをやることはとても許されない、無理なものであります

 ですから、私が申し上げたいのは、放射線総量の全体量をいかに減らすか。これは、要するに数十兆円かかるものであり、世界最新鋭の測定技術と最新鋭の除染技術を直ちに始めないと、国の政策として全くおかしなことになるんです。

 今我々がやっている、例えば幼稚園で除染します。除染して高圧洗浄機でやりますと側溝に入ります。側溝をきれいにしています。しかし、その側溝の水はどこへ行くかというと、下流の農業用水になっています。それで、イタイイタイ病のときの経験は、カドミウムの除染を下手にやりますと二次被害を引き起こします。ですから、国の政策として国民の健康を守るためには、総量の問題をまず考えてください。

 緊急避難、一つ、総量の問題、二つ、これをぜひ議論をよろしくお願いします。

阿部委員 貴重な御意見、ありがとうございます。終わらせていただきます。


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