衆議院 原子力問題調査 特別委員会

原子力問題に関する件─原子力規制行政の在り方

第4号 令和3年4月27日(火曜日)
会議録本文へ 20211年令和3年4月27日(火曜日)
01)(政策研究大学院大学名誉教授)    黒川 清
02)(東京理科大学経営学研究科教授)   石橋 哲
03)(国際大学副学長・国際大学大学院国際経営学研究科教授橘川 武郎
04)(長崎大学核兵器廃絶研究センター副センター長・教授鈴木達治郎
02)


 次に、石橋参考人にお願いいたします。


石橋参考人 石橋哲でございます。

 二〇一九年の十二月に、前回、ここに参上させていただきました。またこのような機会をいただきまして、ありがとうございます。

 資料をちょっと御用意しておりますので、スライドで御覧いただければと思います。

 お手元にも資料をお配りいただいておりますので、よろしくお願いいたします。

 まず一枚目。

 これは、先日というかコロナになる前だったんですけれども、憲政記念館に行って、私、見学してきたものでございます。この写真自体は国立公文書館のデジタルアーカイブから取ったものでございます。

 国会議員の先生方、皆様御存じのとおり、この写真というのは、我々の日本国憲法の前文の前にある文章でございます。

 昭和天皇が日本国憲法を裁可して公布するときにあった文章です。ここに御注目いただきたい言葉がございます。「日本国民の総意に基いて、」という言葉があるということですね。ここをちょっと覚えておいていただければありがたいと思います。先生方にはもう釈迦に説法なので、あれですけれども。

 次のページをまた御覧いただきますと、そこは日本国憲法の前文がございます。

 ここにも非常に注目したい文章がございます。若干、数行ですけれども、読み上げます。

 「日本国民は、正当に選挙された国会における代表者」、これは先生方ですね、「を通じて行動し、われらとわれらの子孫のために、諸国民との協和による成果」を、まあ、広げますということでございます。この「諸国民との協和による成果」というのは、日本以外の国との合意を形成してまいります、そういう意思の表れだと思います。ほかの国との合意を形成していくということであれば、当然ながら日本国内にも国民の間の合意の形成をしていくということをやっていくんだということの宣言だというふうに私は思います。

 それを、この二つ目のポツですね、「その権力は国民の代表者がこれを行使し、」というふうに書いてあります。この合意の形成、諸外国との合意の形成、その前提としての日本国内の合意の形成というのは、我々日本国民がやる、国民の代表者を通じてやる、先生方がリーダーシップを取ってやっていただく、そういうことの決意表明であるというふうに私は思います。

 なので、先生方に国民が厳粛な信託をしているのは、社会的な合意形成をするために是非御活躍いただきたいということであり、決して分断を広げるということではないというふうに強く思うところでございます。

 次のページ。

 これは、「FACTA」という雑誌に、二〇一九年三月、「読者の声」というところで、私がお声がけをいただいて寄稿させていただいた文章です。当時は、ちょっとかっとしておりましたので、言葉を忖度なく書いております。ちょっと読み上げます。これは二〇一九年の三月です。

 「八年前、誰もが誓った「忘れない」は変容したらしい。 一昨年九月、」、ここですね、「原子力特別委で参考人として、私は国会事故調が求めた「(提言の)実施計画」策定公表を改めて求めた。昨年末」、これは二〇一八年の末に、「同じ場で十五カ月間何ら議論がないことを確認した。国会図書館に保管された事故調資料の開示も忘れたか。 再発防止への「起点」に立つことなく「国会事故調は過去だ」と開き直る「選良」。彼らを「代表」と戴く私たち。今や「忘れない」は、年中行事として費消される、訳知り顔の「玩具」と堕し、日常の至るところに溢れる事故の根源的原因「思考停止」は、不祥事として噴出する。 二〇二〇年を目前に、いま商業メディアでは、「サムライ」という言葉が氾濫する。「サムライ」とは、湊川の大楠公」、楠木正成公「のように、永劫回帰の中で正しい判断を志す晴朗な覚悟を持つ者だ。自己満足で塗り固めた殻に閉じこもる者ではない。 私たちの自慰の果てに子どもたちは、「サムライ」を「愛する国」をこの国土に見出せるだろうか? お遊戯の時は過ぎた。「忘れない」の先へ。 未来に誇れる「今」を作れるのは「今」を生きる私たちだ。」

 先ほど申しましたように、ちょっと頭がかっとなっておりましたので、このような言葉を書き連ねて出しました。

 次のページをお願いします。

 今日は、二〇一一年三月十一日から三千七百一日目でございます。先ほど御覧いただきました二〇一九年の三月の私の言葉のほとばしりから丸二年たちました。前回お呼びいただいたのは二〇一九年の十二月の五日でございました。一年半たっております。

 次のページをお願いします。

 こういう場を頂戴するということをお聞きしましたので、先月、三月二十四日ですね、ちょうど福島県浜通りから聖火ランナーが出走する前日です、私、浜通りにお邪魔をしてまいりました。この写真を御覧ください。ここは浪江町請戸地区の三月二十四日の光景です。真ん中には、ちょっと浮き彫りにしたような形で出してありますけれども、これはすぐそこにある伝承館の写真です。

 皆様、この写真を見て、どのような感覚をお受けになりましたでしょうか。私は、心の中に非常にざらざらしたものを感じました。このざらざらしたものを大切にしていかなければいけないということを強く感じております。

 次のページをお願いいたします。

 私、ここにお邪魔をすると必ず申し上げることですので、先生方はもう耳にたこができていることだと思いますけれども、事故調はたかだか半年間しかありませんでした、できなかったことはたくさんあります。

 アメリカの連邦議会は、ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンスに対して調査依頼を出して、二年間の福島原発事故の調査を、二年間の調査を二回回しています。計四年です。私どもは半年でした。

 契約期間は限られておりましたので、できないことはたくさんあります。報告書、今お手元にお配りいただいておりますダイジェスト版には、扱わなかった事項ということも列挙してあります。このようなこともまだまだ積み残しであると思います。

 では、次のページをお願いいたします。

 そこでは、意思決定プロセスと判断プロセスの透明性、公開性を担保することが大事であるということを考え、それを実行するために、フルセットで七つの提言を申し上げている次第でございます。ここには、やっていただきたいこと、やっていただく際のやり方、全て書いてあります。

 これは何を解決するのかということなんですけれども、次のページをお願いいたします。

 こちらは、国会事故調報告が書いている「問題解決に向けて」というところでございます。ここも、前回も前々回も申し上げておりますので、先生方はよくお知りのことだと思いますけれども、事故の根源的原因はここにあるというふうに私は考えております。

 この三行目ですね。これらの背後にあるのは、自らの行動を正当化し、責任回避を最優先に記録を残さない不透明な制度、組織、さらにはこれを許容する法的枠組みであった、関係者に共通していたのは無知と慢心であり、国民の安全を最優先とせず、組織の利益を最優先とする組織依存のマインドセットであった、思い込み、常識であったということです。この根本原因の解決なくして、再発防止は不可能であるということも申し上げております。これは二〇一二年の七月の五日に先生方に納品をさせていただいた提言でございます。

 この解決するための方法として、先ほど申し上げた七つの提言を実行していただき、それによって、意思決定と判断プロセスの透明性、公開性を担保してくださいということをお願いしてある次第でございます。

 次のページをお願いいたします。

 フルセットでございますので、一遍にできるはずがありませんので、実施計画を速やかに策定し、進捗状況を国民に公表してくださいということをお願いをいたしました。先ほどの「FACTA」の文章は、まだできていませんということをお伺いしましたので、どうなっているんでしょうかという思いがほとばしって筆が走った、そういう文章でございます。

 次のページをお願いいたします。

 二〇一九年十二月の五日にも同じ言葉を私は述べさせていただきました。これは事故以降の事故調提言に関する経緯の図でございます。

 事故が起こって、アメリカに遅れること数か月、九か月目にして国会事故調は設立されました。半年と言われて、七か月ちょっと手前で報告書を御提言した、納品したという形になっております。

 そこから、今日で百二か月たちました。実施計画の御議論、進捗状況の公表につきましては、どこまで進捗されましたでしょうか。この後、是非お伺いさせていただけるものというふうに考えております。

 次のページをお願いします。

 今コロナが来ています。この二〇一一年から十年たった今日、私たちは二〇一一年のときに思い描いた未来を生きているでしょうか。成り行きの未来に生きているのではないかというふうに思います。

 今コロナが来ています。この先の十年、十年後の未来は、私たちはどのような世界に生きているのでしょうか。成り行きの未来を生きているのか、なりたい未来を生きているのか。その分岐点は、今まさにここにあるというふうに思います。

 今から二〇一一年を振り返って、何があったのか、それぞれ、この局面に対峙する方々は何をどう考えたのか、今どれをどのように思っているのかを振り返るということは非常に大切なことなのではないかというふうに考えております。

 次のページをお願いします。

 私たちは、忘れないという情緒的な言葉をたくさん吐いてきております。それを繰り返すことによって、忘れていくということを繰り返してきています。風化と復興はコインの表裏です。それを繰り返すということは、他人事化を繰り返しすることによって成り行きの未来を今生きているということではないかと思います。

 これを、なりたい未来に変えていくためには、きちっと過去を振り返り、私たちは何をしてきたのか、何をしてこなかったのか、それをきちっと記録に残すこと、そのプロセスはまさにこの局面を自分事化するということになりますので、それを集積して浸透させていくことが私たちのなすべきことなのでないかというふうに思います。

 次、お願いします。

 これも、事故調の報告書に書いてある言葉です。これも何度も申し上げておりますので、先生方ももう耳にたこができているということだと思いますけれども、この提言を一歩一歩着実に実行することは、不断の改革の努力を要します。それは、先生方、国民、未来の国民から今を託された国会議員の先生方、国権の最高機関である国会にお願いしているので、やっていただくことは当然の前提です。それは、先生方だけではなくて、私たち一人一人の国民が担うべき使命であるということを委員会は確信するということで閉じています。

 次のページをお願いします。

 先生方ももう当然お読みいただいているというふうに思いますけれども、国会事故調報告書は高校生も読んでいます。

 私たちが今何をなすのかということを真摯に振り返りたいと思います。この後、この二〇一九年の十二月の五日からどのような進捗があったのかということをお聞かせいただくことを楽しみにしております。どうぞよろしくお願いします。

 以上でございます。(拍手)

○渡辺委員長 ありがとうございました。


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