衆議院 原子力問題調査 特別委員会
原子力問題に関する件(原子力規制行政の在り方)

(質疑応答編)
1)自民・津島淳  2)国民民主党・浅野哲 3)公明党・中野洋昌
4)日本共産党・藤野保史 5)日本維新会・足立康史 6)立憲民主党・山崎誠 


○渡辺委員長 次に、浅野哲君。

○浅野委員 国民民主党の浅野哲でございます。

 本日は、アドバイザリー・ボードの皆様には、お忙しい中、大変貴重なお話を伺わせていただきまして、ありがとうございました。本日お話しいただいた内容も含めて、これから少し質問をさせていただきたいと思いますが、私からは、まず黒川参考人と石橋参考人にお伺いをしたいと思っております。

 冒頭おっしゃっておりましたように、東日本大震災から十年が経過をいたしました。当委員会も、この事故調の提言を受けて発足をし、それ以降様々な議論をしてまいっておりますが、私自身は三年半前の選挙で初当選をした身ですので、そこから三年半、この委員会に所属をして、議論の経過を見させていただいております。それ以前の議論についても議事録等で勉強させていただいておりますが、本日も石橋参考人からありましたように、この十年間、この委員会が、当初、提言の一に込められた思いに対して、どのような評価、思いを皆様が持たれているかというところを、まず最初にお二人から伺いたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

○黒川参考人 私は本当に原子力とかそういうところは全く素人だったんですけれども、あの事故が起こったときに私はアメリカで十四年、大学のキャリアをつくっていましたので、アメリカのナショナルアカデミーの方のメディスンのメンバーになっておりましたので、あそこは、必ず何かがあったときに、政策もそうですし、ナショナルアカデミーが、これはリンカーンがつくっているんですけれども、これをつくったときに、あなたたちは、そういういろんなところの科学者たちなんだから、政府の法律とか政策について常に評価をし、また提言をしてくださいということを最初に言っておられるんですね。

 だから、このアカデミー、これは今学術会議ですけれども、アメリカではそのナショナルアカデミーがそういうリンカーンのイニシアチブでできているんですね。それが、マンデートとして、政府について、いろんなクリティカルなことを言ってくださいという話をしているので、僕はそれを必ずやるようになっているんです。

 ところが、イギリスの場合もそうですけれども、トニー・ブレアのときにイラク戦争に参戦しましたよね。だけれども、あれはちゃんとしたプロセスを取っていなかったんじゃないのかという話を、やはりこういう独立な委員会を作って、十四か月かかって、あれは確かにちゃんとしたプロセスを踏んでいなかったという結果を出しています。トニー・ブレアは、辞めていましたけれどもまだ元気でしたから、そんなことはないんだと言っていたけれども、みんな無視しちゃいましたね。だから、その行政のプロセスとかそういうことを、必ずインディペンデントな委員会をしてやるという、非常に健全なところがあるなと。

 これが、私たちがやったのは、国会が新しい法律を作って、独立した人に調査をやらせたという話自身が日本では初めてなんですね。だから、私が名指しされたのは、私は本当に素人なのに、そういうやり方を知っていたので、なるべく全部公開してやったというのもそうなんですけれども、そういう意味で、かなり歴史的な違いがあるなと思っています。

 ですから、あれをきっかけに、またこういう独立した委員会をどんどんどんどんつくるといいんじゃないかなとおっしゃっているのが、実を言うと、今の大島衆議院議長があるところにコメントをされておりまして、議運というのはすごく大事だと。衆議院も参議院も議運が大事なんだけれども、これをもっと活用しろと。活用するときに、何も国会議員だけじゃなくて、ほかの人たちも入れたらいいんだよ、その一番いい例が国会事故調だということをおっしゃっているんですね。

 私、だから、去年ですけれども、大島先生のところにお話しに行っていろいろ話をしていったら、そのとおりなんだよとおっしゃっていましたけれども、これが初めてだったということ自身に、日本の、行政をチェックするとか、メカニズムが十分じゃないなというのは、それは、国会の先生たちだけではやはりいろんなところが、限りがあるので、私、国会事故調をやっているときに非常に感じたのは、あのときは民主党政権ですけれども、役所の人も呼んでいろいろ聞きました。議員さんも呼びました。菅総理も呼びましたけれども、私があのとき一番感じた違いは、役所の人たちと違いを感じたのは、やはりさっきのお話どおりに、国会議員の方は、皆さん選ばれてきますので、いろんな違ったスペクトラムの、選挙をする人たちのことを知っているわけですよ。だから、議員さんに質問しているときの返事が、非常に国民に近い答えをされるんですね。ところが、役所の人というのは全然やはり違うんですね。あれで、私は呼んでいろいろな話を委員会のときに聞いたときに、あっ、こんなに違うんだ、最初から違うということをすごく感じました。

 それで、やはり議員さんの力の多様性、それから、地元の人たちの、多様な人たちをリプレゼントして、代表しているんだなということを本当にあのとき感じて、どこかに書いたことがありますけれども、役所の人とは全然違うなという、その感覚が私は大事だと思って、先生がおっしゃることは一つ一つがすごく私、腑に落ちたような気がするし、先生の言うこともそうだと思ったので、余計なことも言いましたけれども、そういうことでございました。それで、大島議長にもちょっとお時間をいただいて、その話をちょっとしに行ったことがございます。

 ありがとうございます。



○石橋参考人 ありがとうございます。

 今のこの衆議院の原子力問題調査特別委員会のこれまでの活動をどう評価しているかというお言葉だったと思いますので、まず先生はどのように評価されているんでしょうかということをまずお伺いしたいんですけれども、質問してはいけないというふうに初めにお伺いしましたので、是非いつか教えていただきたいというふうに思います。

 今お手元にお配りしてくださっております国会事故調のダイジェスト版というのがございます。これをちらっと見ていただきますと、めくっていただいた二ページ目の一番上に、「提言一 規制当局に対する国会の監視」という項目がございます。当委員会はこの提言一に基づいてできたというふうにお伺いをしております。

 このタイトル、「規制当局に対する国会の監視」というところが非常に大きく出ていますので、この委員会そのものは原子力規制委員会若しくは原子力規制庁を監視するのだとされているというふうに、当初のこの委員会の設置のときの与野党申合せでそのようになったというふうにお伺いをしております。

 ただ、実際、これは中身を御覧いただきますと、別添でついております付録二というのも今回お配りさせていただいておりますが、この3)のところ、多くの問題に関し、実施状況について監視活動を行う、国会による継続監視が必要な事項として本編に添付と書いています。この「本編に添付」というのが、付録二の必要な事項というものでございます。

 項目を御覧ください。規制委員会、規制庁を監視するだけでできるとは思えません。何のためにこれがあるかというと、規制のとりこが再び生じないように、国民の代表である立法府の先生方が行政府を監視、監督してください、そういう体制をつくってくださいということを申し上げております。

 さて、それをするためにはこの提言七つを全部やってください、フルセットですというふうに申し上げているんですが、先ほども御覧いただきましたとおり、先ほどのダイジェスト版の九ページ目の右側です、「提言の実現に向けて」というところがあります。第一パラグラフの四行目ですね。「当委員会は国会に対してこの提言の実現に向けた実施計画を速やかに策定し、その進捗の状況を国民に公表することを期待する。」と書いております。

 先ほども御質問させていただきましたけれども、ああ、質問してはいけないんですね、私の意見として申し述べさせていただきましたけれども、実施計画の御議論はどこまで進捗されていらっしゃいますでしょうか。二〇一九年の十二月の五日、私は同じ質問を、たしか三回目、させていただきました。是非その進捗をお聞かせいただきたいというふうに思っております。意見でございますので。

 以上でございます。

○浅野委員 ありがとうございました。

 今いただいた御意見を踏まえて、私としても、今後の当委員会の内容については引き続き改善に貢献できるように全力を尽くしてまいりたいと思っております。

 次の質問ですけれども、当委員会の役割の一つとして、石橋参考人がおっしゃったように、規制行政の監視というのがございます。次は橘川参考人に少し御意見をいただきたいと思っておりますが、さきの柏崎刈羽原子力発電所での核防護設備の不全の事案がございました。現在、この委員会でも規制当局に関連質疑を行っているところでありますが、私が今日伺いたいのは、そもそもこの不全が発覚した経過を聞いておりますと、どういう異常が起こったときに報告するかというルールがいまいちまだ不完全であったのではないか、そのような懸念を持っております。あくまでも事業者の裁量性にある程度委任をした形で報告を求めていた結果、ほかの事業者は一つ一つ丁寧に報告していたのに対して、今回、東京電力は、これまでは包括的に報告していたので詳細が伝え切れなかったというような話も聞いております。

 こうしたことを聞くと、規制側が事業者の裁量に任せる部分については再点検をする必要があるのではないかということ、また、少しこの問題に関連して、これから規制委員会は約二千時間に及ぶ審査、調査を行うということになっていますが、二千という数字がなぜ出てきたのかというと、このガイドラインに二千という数字が書いてあるからなんですが、やや画一的ではないかというような印象も持っております。やはり異常の内容に応じてしっかりそれにふさわしい調査時間を確保するのが筋であろうかと思います。

 そういったことを考えますと、この規制行政の在り方について、事業者側の裁量に任せ過ぎていた部分があるのではないか、そして、その規制側の対応としても、個別の事案によらず、やや画一的な数字が、二千という数字が今回書かれていることを見ると、やはりこの規制の行い方について私は課題感を持っているんですが、橘川参考人の御意見、この件について御開陳いただければと思います。


○橘川参考人 御質問ありがとうございました。

 まず、今回の件は、いろいろ、裁量に任されている問題の中のいろいろある中で、それ以前の問題なんですね、全て。先ほど言いましたけれども、危険性の最小化というのが原子力を動かすときの大前提なので、そこの本当に大前提に関わる問題なので、これはほかの問題とちょっと区別して考えた方がいいんじゃないか、それぐらいの深刻な問題があると思います。物によってはいろいろな規制の中で裁量に任せた方がかえって進むというような部分があると思いますけれども、この核防護のことに関して言うとそれは違うんじゃないかというふうに思います。

 それから、二千時間の件は、私、専門家でないので、専門家でない人間が割と何でもしゃべっちゃうところが有識者の問題だと思っていますので、私、文科系の歴史家なので、そこのところはお答えできません。

 ただ、一般論として、規制委員会について私が思っていることは、反原発派の人も推進派の人も両方文句を言っているんです、規制委員会に対して。ということは、規制委員会は頑張っているんじゃないかというのが私の意見であります。


○浅野委員 ありがとうございました。

 私も今回の不全の事案については、本来やるべきことをやっていなかったという原因、ここに対しては大変遺憾に思っていますし、しっかり再発防止を、私としてもこの委員会の中で対策の内容についても深めていきたいと思っております。

 続いては、鈴木参考人に、核燃料サイクルについてお話を伺いたいと思います。

 本日、お話しされたテーマは別でしたけれども、以前この当委員会でお話しされた内容、大変私も印象に残っておりまして、全量再処理を見直し、部分再処理というところ、また本日、橘川参考人におかれましては直接処分の併用ということもおっしゃっておりました。

 選択肢としては検討をすべきだというふうに、私、現在思っておりますが、この直接処分というものについては、じゃ、可逆的なものなのか不可逆的なものなのかという論点もあると思います。私自身は、やはりエネルギーに関してはあらゆる選択肢を常に持っておくべきである、これから技術の進歩に従って使えるものは使う、捨てるならそのまま捨てたままにするという選択肢も検討に値するのではないかと思うんですが、この処分の際の不可逆性、可逆性についてどのようにお考えを持っていらっしゃるか、是非お願いいたします。


○鈴木参考人 御質問ありがとうございます。

 直接処分をしようが、再処理した後のガラス固化処分であっても、今、可逆性ということは非常に重要なテーマになっております。

 というのは、今の知見でできる範囲のことをやるということなんですが、長い期間を考えますと、将来の知見で、あるいはやっているうちに不都合が出るかもしれないということで、ガラス固化体にしても、今の基本計画、放射性廃棄物処分の基本計画の中にも、可逆性を考慮するということになっています。だから、地層処分全体の考え方として、そのような可逆性の考え方は今重要になっているかなというのがまず第一点でございます。

 それから、将来エネルギーが必要なときどうするかという御質問については、そのときは、多分、原子力発電所がたくさん動いているという前提だと思うんですね。そうすると、使用済燃料は、新しい使用済燃料がいっぱい出てまいりますので、そちらの使用済燃料をまず使う方が当然優先されると思います。それでも十分にプルトニウムが回収できるはずですので、わざわざ地下にあるものを取り出して利用するよりは、新しい使用済燃料のプルトニウムを使った方が効率的だということで、海外で、将来の資源のことを考えている場合でも、直接処分はとにかくやる、もし必要になったら、将来のための再処理の技術や新型炉の技術開発は行う、こちらの方が合理的ではないかと私は考えております。

 とにかく、今、使用済燃料で再処理に適さないものがもう既に出ておりますので、これをどうするかと考えた場合には、当然、直接処分はもう不可避であるというふうに考えておりますので、是非これを法律で可能にできるように国会で検討していただきたいと思います。

 以上です。





○浅野委員
 ありがとうございました。

 時間が残り少なくなってきましたので、次が最後の質問になりますが、もう一問、鈴木参考人にお伺いしたいと思います。

 人材の確保、技術の伝承についてであります。

 本日、皆様のお話の中には余りありませんでしたけれども、全員が恐らく共通する問題意識ではないかというふうに思います。

 十年前の事故から、当時、例えば、施設を責任を持って稼働する責任者であった人たちというのは、既に十歳年を重ねておりまして、産業の現場でいえば、十年たつと世代が一つ変わります。だんだんと時間が経過していくと、当時の経験を有する人材がいなくなる、そして引き継ぐ者も少なくなっていく。現に、大学でもこの原子力関連の学科に入学希望する学生が減っているという話も伺います。

 これについてどのように対応していくべきなのか、お考えをいただければありがたいです。


○鈴木参考人 ありがとうございます。

 この件、以前、たしか、この国会、この委員会でも発言させていただいたと思うんですが、三つほどあります。

 まず、どのような人材が本当に今後必要なのかというニーズの把握ですね。これをまずすることですね。

 そのときに、原子力技術全般というふうに考えるのではなくて、今最も必要なのは、今動いている既存原子力発電所の安全確保等、それから廃棄、廃止措置や廃炉、これは確実に必要なものなので、これについても人材確保を考えていかなきゃいけない。一番最後に、多分、新規原発の人材確保になると思うんですね。その優先順位を間違えないこと。というのは、新規原発に必要な人材と、廃止措置や廃棄物処分、運転に関わる人材は違ってきます。

 それから第二に、人材確保といったときに、将来の世代を考えた場合には、当然ながら、研究基盤、これを維持することが大事だ。

 これは、当時の事故直後の原子力委員会の提言にも出ていますし、最近の原子力委員会の原子力白書にも書かれているんですが、今までの研究開発がどうしても、核燃サイクルとか高速炉とか、プロジェクト志向なんですけれども、そうではなくて、しっかりと将来の技術、革新技術を維持できるような人材確保ができるような研究基盤のインフラを確保する、これが二番目の問題です。

 最後に、原子力産業なんですけれども、海外を見ていますと、国内だけで維持するということではなくて、国際協力で人材を確保するという仕組みも必要ではないか。

 これは、当時も、原子力産業の方々にお話を伺ってみますと、いずれ日本の原子力市場が大きくならないかもしれないということで、人材確保を、海外からちゃんと調達する、あるいは海外での経験を有効に使うということを考えておられますので、何も国内だけで維持する必要はないのではないか。

 このような幾つかのポイントを考えながら、おっしゃるとおり、これは大変重要な問題ですので、これも推進、脱原発かかわらず検討していただきたいと思います。




○浅野委員 どうもありがとうございました。終わります。

3)公明党・中野洋昌へ