衆議院 原子力問題調査 特別委員会
原子力問題に関する件(原子力規制行政の在り方)

(質疑応答編)
1)自民・津島淳  2)国民民主党・浅野哲 3)公明党・中野洋昌
4)日本共産党・藤野保史 5)日本維新会・足立康史 6)立憲民主党・山崎誠  意見陳述編へ 


○渡辺委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。津島君。

津島委員 自由民主党の津島淳でございます。

 本日は、アドバイザリー・ボードの先生方、四名の先生方、おいでいただきまして、まずはそれぞれの立場からの御意見を頂戴いたしました。こういう機会をいただけましたこと、心より感謝を申し上げ、また、こうして質疑に立たせていただけるということは、非常に私にとってありがたいことでございます。

 改めて、委員長、理事、そして委員の皆さんに感謝を申し上げるところでございます。

 私の地元というのは、青森県の第一選挙区、県庁所在地の青森市と、それから、原発関連施設が立地している下北半島というのが前回の選挙から選挙区に加わりました。ですので、初当選以来、二回の選挙というのは、直接その立地自治体というのは選挙区ではなかった、そういう感覚で有権者の皆さんとエネルギー問題に対して議論をしていた。

 ただ、もちろん立地県とすれば、原発あるいはサイクル政策というのは進めていかなければならない、いや、進めましょうということを言っておったんですが、いよいよ立地自治体が選挙区に入ってくると、より直接の対話の機会というのが増えてくる。

 私、思うんですが、原発を進めるか否かということを抜きに、どうも、この場での議論、永田町、霞が関の議論で地元の声というのがどうしても通っていないな、地元の皆さんが置き去りにされているというところが時に国に対する不信というものにつながりかねない、そういう危惧を持ちます。ですので、できるだけ私は、こういった国会での質疑の場で地元の声というのを紹介するようにしようとまず心がけているところであります。


 もう既に原発誘致というものが決まって半世紀、四半世紀、そういう歴史がある中で、ある意味、立地自治体の住民の若い世代、多くは、原発施設があって当たり前、あるのが普通の状態で生まれ育っている、そういう世代がだんだんと増えてきています。つまりは、原発を入れるかどうかを決めるときに、それこそ身内同士が真っ二つに分かれて議論した、そういう歴史がだんだんと過去のものになりつつある。

 石橋先生が今日もおっしゃっておられる、過去を、声をしっかり蓄積をしてデータとして残し、そこから何を読み取るのか、分析をして次なる政策に生かすということは大変大事なことであるし、その声を集めているのはほかの誰でもない我々国会議員。やはり、日常的にやっていること、そこから何を読み取って、どう生かしていくのか、まさに大事なことだ、そういう私どもの仕事の原点というものを改めて考えさせられる、今日、石橋先生のお話を聞いて思ったところでございます。

 そして、どうしてもこの原子力をめぐる問題で二項対立の議論になりがちであるというのも、これはちょっとお互いに、相手の意見、私からすれば、反原発、脱原発の方のおっしゃることというのにやはりしっかり耳を傾けた上で、でも、私は、私自身の信念でもってやはりこの国には原子力というものが必要だと思うし、じゃ、それを国民的に合意を得て進めていくためには何をやらなきゃいけないのか、政治が何をなすべきなのかということを、真剣に答えを出していかなければ、ただ今までの延長線上で物事を進めようとしてもそれは理解は得られぬと思うところでございます。

 ですから、大事なことは、意思決定をするときにどういう議論がなされ、結果どういう決定に至ったのかということ、プロセスを透明化することというのはすごく大事なことです。

 私は、だから、この委員会の議論こそメディアがこぞって中継をして、全国民が、こういう議論をしているんだ、真摯な議論をしているんだということをやはり知ってもらった上で、国民の皆さんも、私は、原発しようがないな、原発進めようか、あるいはそうではない方もいらっしゃる、そういう流れにしていくということが必要だと思っております。

 二十分時間いただいて私の演説で終わらせるのは非常にもったいないので、これからできるだけ四人の先生方に、お一人一問ぐらいはお聞きしていければと思っております。

 まず、ちょっと個別の話にも入ってまいるんですが、今私が基本的に申し上げたこと、そして改めて、石橋先生に、私も、この国会事故調の報告書、震災、事故から十年ということで読ませていただいて、そして、実は今、我々、危機管理の真っただ中にあるわけですね。原発事故とはまた違う種類の危機に直面をしている。そういう中にあって、十年前のあのときの政府の対応というものを客観的に見て、どこに一番問題があったのか。
 私は、ちなみにそのときは落選中で、より今よりは国民に近い立場で、一連の政府の対応というのを見ていました。見て、考えて、自分だったらこうする、こういうことを提言した、いろいろ考えていました。


 情報の提供が非常に限られて、一方的であった。三月十一日のあのときは、珍しく太平洋側に雪が降る、つまり、日本海側から季節風が吹く、それが冬の当たり前の天気であった。そうじゃなかったですね、あのときは。むしろ、太平洋から風が入ってくる、陸地に向かって吹くようなそういう天気であったときに、同心円状の避難、最初の避難の対象地域の設定ということは、あれはやはりおかしい。気象条件等を考慮して当然に設定をすべきであったような、つまり、そういったことから、当初のシミュレーションというものが全くできていなかった。これは、政治の側がしっかり教訓とすべきことだろうと思っております。私はそういう、そのとき思ったことは今でも思っているし、それは何とかしなければいけないというふうに思っています

 石橋先生に、あのときの教訓ということを、報告書にも込められたと思いますが、問題点をいま一度明確に御指摘いただけるとありがたく存じますが、いかがでしょうか。


石橋参考人 ありがとうございます。

 今の津島先生の御質問は、多分、一言ではお答えし切れないということだと思います。ですから、この報告書でフルセットで御回答しているということだと思います。

 今、私たち、コロナの災禍の真っただ中にいます。私にはあの福島原発事故の現象と非常に重なって見える部分があります。

 確かに、二〇一一年の三月十一日、我々は、先生方もそうですし、日本政府もそうですし、国民側もそうだと思いますけれども、あのような事故が起こるということ、分かっていたはずなのに、可能性は十分認識されていたであろうはずなのに、知らないふりをしていたというのが事実だと思います。

 このコロナ、感染症が大きな影響を及ぼすかもしれないということは、例えばあのゲイツさんがグローバルな基金を立てていらっしゃったりして、皆さん分かっていたはずです。それに対して効果的な手だてが、今たくさんの方々が御尽力をいただいていて、医療従事者の方も日夜、必死の御努力をいただいているところですけれども、必ずしも、ほかの国でうまくいっていると評価されているのに比べるとそこまでの対応はできていないというのが事実だと思いますので、それも分かっていたのに知らないふりをしている、そこが一番の問題ではないかと思います。

 発生原因は幾つかあります。原発事故でも、人為的災害であったり人為外の災害であったり、若しくは内部事象であったり外部事象であったり、いろいろなことがあります。発生原因ごとに起こってくる経過というのはそれぞれ違うのかというと、恐らく共通の部分はたくさんあると思います。事象を縦割りで所管省庁ごとに対応していくのではなくて、発生事象がその後どのような進展をしていくのか、共通事項は何なのかという横串の目線で対策を考えていくということが、実はすごく大事なんじゃないかというふうに思います。

 以上でございます。

津島委員 石橋先生、ありがとうございます。

 KYという言葉があって、空気を読まないんじゃなくて、危険予知。今は、前に言った空気を読まない方で思い浮かべる人が多くなってしまいましたが、実は、危険予知をKYといって、いろいろな企業の安全活動の一つの指針である。そして、ハインリッヒの法則というのがあって、重大なインシデントが起こるときには、必ず小さなインシデントの積み重ねによって、結果、重大なインシデント、事象が起こる、だから、小さな事象を見逃さないようにしよう、そういうことが基本であって。

 私は、そして危機管理については、亡くなられました佐々淳行先生の御著書を読んで一つ印象残っている飛び報告という、平時の指揮命令系統の中で手順を追って報告をしていたら間に合わなくなる、万が一にもその対象者がその場にいなかったら帰ってくるまで報告が遅れることになります、そんなことをしていたら危機がどんどん事態が進行してしまうから、いなかったら飛び越してその上の人に、直接トップに報告する、それをいとわない、そういう姿勢が大事だという、非常に印象に残っています、こうしたこと。そして横串をしっかり通していくということ。

 何よりもの教訓であって、そうしたことを今の事態そして次なる事態にどう生かしていくかというのを、それをしっかり生かせる状況にしていかなければ次の世代にも申し訳が立たぬ、私はそういうふうに思っております。ですので、引き続き、そういった考え方で議論をこの場でもさせていただけたら本当にありがたいなと思います。

そして、今度は黒川先生に、ALPS処理水の海洋放出の決定について、諸外国との関係、そして我が国の取るべきスタンス、そういった観点から質問します。

 科学的にいろいろ言われている、いわゆる多核種除去装置、ALPSによる処理水については、トリチウム以外の物質については取り除くことができる、そして、トリチウムというものは非常に現代の技術でも取り除くのは難しい。まずそこは共通認識をこの場で持たせていただいた上で、こういった措置は世界の原発において同様の措置が取られている、これも共通認識で持たせていただいて、じゃ、今回の福島のをどうするんだという。

 トリチウムを含んだ処理水については、規制基準はもちろん、WHOの飲料水の基準よりも薄めて、希釈して放出しますということ、これは、私が得た情報では、韓国もそのことは分かっている。内部で韓国政府はそういった情報を分かっていて、当初、猛反発をしました。しかし、欧米の反応というのは、おおむね好意的な、そして妥当なものだ、そういう論評が多くございました。韓国も、例えば米国のケリー特使が訪韓したときに協力を打診したのがうまくいかなかったということが、今、かの国は方針を転換し、当初の猛反発から何やら条件闘争に入りそうな、そんな気配がいたしております。

 私は、日本政府として、とにかく定期的に透明性を持ってデータを出し続け、海洋放出の妥当性ということを示す、これは対外的にもそうですし、何よりも、私も地元の漁師さんとの対話ということの中でいろんな懸念をいただきます。福島だけじゃない。東北というのは、西日本の方々から、あるいは世界から見れば、福島も青森も同じ東北なんですね。ということは、福島の問題は青森の問題であって、私はそういう漁師さんの気持ちが痛いほど分かる。だからこそ、じゃ、なすべきこととして、徹底的に透明性を持たせてデータを出していくことが重要だと思うんですが、黒川先生の御見識をいただきたいと思います


○黒川参考人 御指摘ありがとうございます。

 実は、前回のときに、佐藤さんという方をお呼びして、しゃべってもらいました。そのとき彼は、処理水にどのぐらいほかの核があるのかという話を、見せていただいたので、それをまたお送りします、最近のデータも。

 やはり、それは隠す必要はないんだけれども、それが出てこないというところに一番問題があるわけで、後で出たときに大騒ぎになる。先生のおっしゃるとおり、やはり透明性が大事ですので、元のあるデータをそのまま出した上でやっていただきたいなというのが私の主張で、皆さん、新聞もそうですけれども、トリチウム、トリチウムと言っているから間違っちゃうわけで、トリチウムはどこでも流していますよね。だけれども、今、汚染水が流れてきちゃっているので、これを処理したらトリチウムだけのはずはないわけで、それがどのぐらいあるのかということを常に透明性を持っていればいいわけで、それが後で分かっちゃったときには、この濃度ならいいんだよと言っても、先生のおっしゃるとおり、透明性が、出たときに違って出たら、途端にもう信頼がなくなっちゃう、これが私が一番恐れていることなので、先生のおっしゃるとおりだと思います。


○津島委員 ありがとうございます。

 透明性ということは、かつて私はフランスのラ・アーグの再処理を視察したときに、日々のデータをちゃんとつまびらかにしているというところ、非常に地味なことなんですけれども、これは大事なことだというふうに感銘を受けた記憶がございます。

 それから、今、黒川先生おっしゃった、元を断たなきゃいけない、福島の話です。元を断たなきゃいけないという、地下水の動きをしっかり解明して、できるだけ止めるということをやらないと、処理水の元の汚染水が生まれる状態も止めていかなきゃいけないということも私は大事だと思っています。そういったことも全部つまびらかにしていくということが極めて重要なことであろうというふうに思っております。


 質問時間、あと三分ほどですので、ちょっと今度は、リプレース、そして廃炉、これは実は私はセットだと思っています。原発はもう要らないという方は、もう廃炉だけで十分だろう、リプレースはという話はあるかもしれませんが、いやいやと。やはり、新しい知見を入れた、新しい技術で造った炉というものを、今造っているのであれば、大間がそうですが、これを生かしていく方が、相対的なリスクという部分では低いのではないかという議論は、これはあり得ると思うんですね。そして、新しいものに置き換えるということを議論せずにエネルギーのベストミックスということを考えるのは、これは非現実的。これは、誰しも、それはそうだよねと納得いただけることだと思うんですね。

 さあ、じゃ、廃炉ということは、いずれにしろ日本が避けては通れない。これはいつかはやらなきゃいけない。

 私は、かつて、この委員会、あのときは高木先生、そして吉野先生、そして藤野先生も御一緒でした、アメリカに視察に行かせていただきました。なかなか面白い面々だと皆様お感じになるかもしれません。勉強になりました。

 アメリカでは、結局、廃炉になる炉をその電力会社から切り離しちゃうんですね。だから、廃炉に関する負担というものをその電力会社からなくすということ、このことについて、アメリカのモデルというのを、橘川先生と鈴木先生、特に鈴木先生は福島の廃炉ということに特化してお聞きしますけれども、それぞれ、ちょっとお一言ずついただきたいと思いますが、いかがでしょうか。


○橘川参考人 時間がないので手短にお答えさせていただきます。

 私は、アメリカと日本の非常に大きな違いは、例えばスリーマイルでも、二つ炉があって、片方がメルトダウンしたんですけれども、八年ぐらいたったらそれをまた、もう一個の炉は使っているわけですね。非常に現実的な、調整能力が高いやり方をしていると思いますが、その大きな力は海軍の力だと思います。そういう、日本の場合に、第三者的な調停を行う人がいないというところが日米間の一番大きな違いだと思っております。

 以上です。


○鈴木参考人 アメリカの原子力発電所の廃止措置、一般的には日本と同じで電力会社がやる責任を持っておりまして、ただ、費用については、電気料金から回収するもので基金をつくるという制度になっています。スリーマイル島の事故の廃止措置については、御指摘のとおり、特別の措置が行われておりまして、不足分をほかのところから調達していいと。ただし、基本は民間が責任を持つということであります。

 以上です。

○津島委員 ありがとうございます。

 以上で終わりにいたします。どうもありがとうございます。

2)国民民主党・浅野哲へ