衆議院 原子力問題調査 特別委員会
原子力問題に関する件(原子力規制行政の在り方)

(質疑応答編)
1)自民・津島淳  2)国民民主党・浅野哲 3)公明党・中野洋昌
4)日本共産党・藤野保史 5)日本維新会・足立康史 6)立憲民主党・山崎誠 



○渡辺委員長 次に、山崎誠君。

山崎委員 こんにちは。立憲民主党、山崎誠でございます。

 長時間にわたりまして、今日は、本当にありがとうございます、貴重な御意見をいただきました。今までいろいろ、エネルギーの問題、原発の問題を考えてきておりますが、示唆に富むお話であります。二十分ということで残り是非おつき合いをよろしくお願いを申し上げます。

 いろいろ私も考えてきたんですが、一点、今日のプレゼンテーションの中で、鈴木先生からトリチウムの分離のお話が出てきたじゃないですか、今ずっとお話がありました。試算の中で、海洋放出せずにトリチウム分離をしたコストということで計算されています。

 私たちの認識は、トリチウムの分離技術というのは確立していなくて、これは経産省の皆さんなんかとずっと議論していて実用化できないんだというお話だったんですが、先生は、これは「ふげん」の例を引かれたようでありますが、技術的にどういう御認識でいらっしゃるのか、確認したいと思います。


○鈴木参考人 「ふげん」でやったやつは研究開発なので、今すぐその「ふげん」でやった技術を実用化するという段階にはないと思います。

 ただ、トリチウムの分離は、重水炉を持っているカナダとか、現実に商用規模で行われていますし、全く不可能というわけではないです。技術的にはいろいろ提案もありますし、ロシアの提案もありますし、最近はベンチャーからも提案が出ていますので、私は、技術的には可能だと。ただし、実際に福島でやろうと思えば、それなりに実証試験が必要だなということで、今すぐというわけではありませんが、将来の可能性というのは当然考えていくべきだと思います。

 ただ、分離してもトリチウムが消えるわけではないので、どこかに貯蔵しなきゃいけないのと、結局、薄くなるだけでやはりその処理水の中にはトリチウムは少しは残りますので、どこまで薄くするのかという議論は必要だと思います。



○山崎委員 ありがとうございます。

 これは非常に大事なアドバイスでありまして、我々、とにかく放出を考える前に他の方法についてちゃんと検討すべきだということはずっと議論しておりまして、その光を見るような御発言でした。ちょっとこれもまた持ち帰らせていただいて、経産省などとも議論を深めたいと思います。

 それで、私は今日、ちょうど石橋先生からもお話がありまして、忘れない、情緒的な反復による忘却ではなくて、きちっと災害の原点、定点観測のようなことをやるべきだ、そういうお話をいただきました。

 そういう意味で、改めて今、私、十年目で議論させていただいているのが、一つは、最悪のシナリオ、福島の原発のあの事故の最悪のシナリオ。今日資料を配付をさせていただいた一ページ目、これは菅元総理の最近の本からチャート、地図をいただいたんですが、この最悪のシナリオについて、鈴木先生は、原子力委員会にいらして、近藤駿介委員長のすぐそばにいらっしゃったはずですので、このシナリオについて、どういうことだったのか、今どういうふうにお感じになっているのか、ちょっと端的にお話しするのは難しいかもしれませんが、御所見をいただけるでしょうか。


○鈴木参考人 正直申しまして、当時、私どもも含めて、このシナリオ検討については存じ上げていなかったんです。本当にごく少数のメンバーで、近藤委員長は、委員長ではなくて個人として、自分でやられたということで、当時、私自身は存じ上げていなかったです。発表された後、やはりショックを受けました。

 ただし、当時も、こういう定量的な分析ではないですが、4号炉の使用済燃料についてはすごい心配をしておりまして、海外からも問合せがいっぱいありまして、ここまで定量的な計算はしていませんでしたが、4号炉の使用済燃料プールに水があるかないかということが、決定的な差が出るだろうということで大変懸念したことは事実であります。



○山崎委員
 この最悪のシナリオが回避できた理由、これについては、いろんな今分析も進んでいると思います。

 例えば、二号機が圧力爆発をしなかったのはなぜか。偶然、脆弱な部分から抜けたのではないか。それで放射能は広がってしまったわけですけれども、大爆発は避けることができた。それから、四号機のプールも、いろんな理由はあるんでしょうけれども、例えば、水素爆発が起こったけれども、ちょうどいい具合の水素爆発で、屋根が飛んだだけで本体には影響なくて、屋根が空いたので水が入れやすくなったとか、非常に幸運、ある意味、奇跡的に最悪の事態が回避できたというふうに私は認識をしているんですが、鈴木さん、いかがでしょうか。


鈴木参考人 御指摘のとおり、幸運が幾つか重なったということがあると思います。

 私としては、その後、使用済燃料のプール貯蔵についての危険性を十分認識しましたので、できるだけ早く乾式貯蔵に移管するということが大事ではないかと。これは原子力発電が停止していても起こり得ることなので、やはりできる範囲でプール貯蔵から乾式貯蔵に移管することが大事だと思っています。


○山崎委員 黒川先生、この最悪のシナリオについて御所見をいただけますでしょうか。

○黒川参考人 特にありませんが、やはり、失敗ではないですけれども、この事故から学ぶというのがすごく大事だと思うんですね。だから、そういう意味では、学ばなかったじゃないかというのは最悪の状況だなと思います。

 これが例えば日本の非常にドメスティックな問題ならまだ世界は知らないかもしれないけれども、原子炉が四百四十もあって、みんなこれを気にしているときに、日本がそんなことをしたらすごくまずいんじゃないかなというのが私の考えで、できるだけ、今透明性がすごく大事で、ちょっとでも隠したのが分かっちゃったときのレピュテーションリスクというのは物すごい大きなところだと思いますので、是非これは立法府が頑張ってほしいなというのが私の希望です。

○山崎委員 ありがとうございます。

 それで、私、実は、さきの経産委員会で、この事故の被害の大きさ、これは日本を本当に壊滅させるほどの被害が想定された、それもその確率は決して低くなかった、逆に言うと奇跡的に最悪の事態を回避できたんだという認識で、これは、福井地裁の樋口裁判官の御著書がありまして、それでいろいろ学ばせていただいて質問している中で、資料の二の方なんですが、耐震基準についてというお話であります。

 この図を本から取りましたけれども、日本では、いわゆる千ガルを超えるような地震、大きな地震が多発をしているというのは事実であります。そして、原発の耐震基準は、残念ながら、基準地震動、それよりも低いものがたくさんあります、六百五十、六百二十、七百。それでよしとして動いている原発がたくさんあるというのが現実であります。

 それで、これは気象庁の方なんかもお呼びをして、じゃ、例えば、この敷地に基準地震動を超えるような地震が起きる、まあ、起きないということを保証できるかといえば、当然できない。電力会社などの説明では、表面の揺れと地下の揺れは違う、地下に基礎を打っているので、地上の揺れだけで判断しないでくださいと言うんですが、これは、ここの樋口裁判官の分析でもありますけれども、逆転することもあるし、必ずしもそれが当てはまるわけではないので、そういう意味では、地震動をどこに基準を置くかというのは、ある意味、最悪を想定して設定すべきではないか。

 この樋口さんの本の中では、例えば住宅メーカーは、これは図にありますけれども、三井ホーム五千百十五ガル、住友林業三千四百六ガルという極めて高い、ある意味最悪の地震にも耐えられるようにということでハウスメーカーは努力されているわけですが、原発は、先ほど言いましたように、六百あるいは七百というお話でした。

 私は、ここをどう解釈されるかというのもお聞きはしたいんですが、資料の三を見ていただきたいんですね。

 この質問をしました。圧倒的に基準地震動が小さ過ぎるんじゃないか、じゃ、これを超える地震が起きたときにどうするんだという質問をしました。そうしたら、規制庁の方からこういう回答があったんです。基準地震動による地震力に対して十分な余裕を有した設計とするように求めております、基準地震動を超えた場合でも一定範囲であれば直ちに危険な状況になるとは考えてございません。これは、規制庁の方です。規制当局の方が、十分な余裕があります、一定の範囲であれば直ちに危険な状況になるとは考えていないと。基準地震動を一定程度超える場合でも、炉心損傷などは防止できるというふうに承知しておりますという解釈なんですね。

 私はびっくりしました。規制するのであれば、これだと、やはり数字をきちっと示すのが筋ですよね。

 その後、追加で質問していくと、明確な基準というものを我々自身が決めているわけではございませんけれども、実際に評価をいたしますと、一番低い発電所でも五割ほどの余裕はあるということは承知しておりますと。

 これが規制なんですよ、今の。この実態、ちょっと、黒川参考人、どうお考えですか。


○黒川参考人 やはりしっかりしたことを決めてほしいですよね、文章にしても。だから、そこが一番の問題だと私も思っています。

 だから、おっしゃるとおり、私が返事する立場ではないですけれども、やはり、これを全部英語で書いたらどう思われるかということなんですよ。

○山崎委員 ありがとうございます。

 規制のとりこというお話がありました。規制庁と今いろんなやり取りをしている。私は規制委員会は頑張っているのではないかと期待をしているんですが、規制庁と話をしていると、今のようなことが平気でぼろぼろ出てくるんです。

 この間、規制委員会の委員長も、私、残念な発言があって、セキュリティーの不正事案が出ましたよね。何が起きたか、多分何かしら、監視カメラか何かか分かりませんけれども、壊れていて四か月ですか止まっていた、そういう事件が起きた。私、これはどうするんですか、これはほっておくわけにいかないじゃないですか、どうするんですかと聞いた。いや、でも、数百もあるカメラを我々は検査することはできません、電力会社から問題の報告があるまで我々は何もできないに近いことを委員長がおっしゃるんですよ、ちょっと議事録は持ってきませんけれども。

 私は、今のこの規制が、残念ながら、あの震災の直後につくった規制からかなり劣化している。このセキュリティー事案に対して、東京電力の安全文化とか安全意識の劣化だって評価する規制庁が私は本当に規制の劣化が起こっているのではないかなというふうにすごく思っているんですが、黒川参考人、いかがでしょうか。

○黒川参考人 私の言う立場ではないかもしれませんけれども、本当にそうで、今やはり世界中が地球温暖化とかいろんなことで原子力をやるということをある程度チョイスとして仕方がないかもしれませんが、この科学技術とエンジニアリングの非常にレピュテーションの高かった日本がそんなこともやっているのかという話は非常にダメージが大きいと思いますね。

 ですから、それを日本語だから多分何も誰も読めないでいるのかもしれないですけれども、やはりルールは英語でも一緒になって出すということはすごく大事だなという気がします。

 なぜかというと、事故か何か起きたときに、そういうエキスパートとすぐにコミュニケーションしなくちゃいけないわけですよ。私、アメリカでも言ったし、アメリカの国会でもしゃべりましたけれども、そういう話で、言葉のブロックがあるんじゃないかなと思います。これがやはり責任を取る立場の人がちゃんと取っていないということが分かってしまいますものね。

 だから、さっき言ったように、IAEAの人たちも、そのルール、リコメンデーションを日本はちゃんとやっていないということを知っていましたよ。それを今直っているのかといえば、そういう人たちに聞くと、いや、十分じゃないと思いますねと多分言ってくるんじゃないかなという気もします。ですから、是非、先生も言ってみたらどうかなと思います。


○山崎委員 ありがとうございます。

 私は本当に、今はやりの言葉ではないですが、忖度のとりこになっているように思うんですよ。要するに、原発を動かさなきゃいけないと。いや、政府はああ言っている、原発は動かさなきゃいけない。私はこれは更田委員長にも確認をして、いやいや、どんな理由があろうとも安全最優先で止めるものは止める、そうはおっしゃるんですけれども、規制当局のこの地震の判断を見ても、明らかに電力会社の言いなりです。

 だから、これでは私は原発を動かせないというふうに強く思いまして、これは橘川参考人にお聞きしたいんですけれども、この今の議論は、合理的、橘川先生がいつも言う現実的な考え方からして、こういう基準で原発を動かす、今のような規制の在り方で原発を動かすということは許されるでしょうか、合理的でしょうか。

○橘川参考人 私、お答えする立場ではないんですが、ちょっと先生とは違う意見を持っていまして、志賀の現状ですとか泊の現状を見ますと、非常に規制委員会は電力会社に対して厳しい立場を取っていると思います。よって、規制当局が電力会社の言いなりだという考えを私は持っていません。先ほども言いましたように、両サイドから批判されていますから、根本的には規制当局は頑張っているんじゃないかというのが私の理解であります。

○山崎委員 ちょっと残念であります。

 基準地震動の話を是非お答えいただきたかったなと思うんですけれども、私は、橘川参考人は原発を含めたエネルギーミックスということが一つ現実的なソリューションとしては有効ではないかというお考えかとは思うんですが、例えば今のようなリスクを踏まえてもやはり原発は動かすべきなのか、そしてまた、先ほど危険度最小化という話がSの中で出てきたんですけれども、私はこの事故のリスクの大きさを勘案をすると、危険度最小化、これが掛け算で、確率で求められる世界の中で議論すべきことなのかどうか、そこは私は非常に疑問であります。

 例えば、地震は起きないと言い切ってしまって、その確率はもしかしたら小さいかもしれない、でも、一旦起きてしまったら、本当に日本壊滅、世界が本当に影響を受けるというようなお話なのではないかと思っております。

 申し訳ないんですけれども、この辺りの考え方はどういうふうに整理をされたらよろしいでしょうか。


○橘川参考人 何度も申していますように、原子力というのは危険なものだと思います。日本ほど地震、津波がないとしても、航空機の墜落のリスクとかというのは世界中ありますので、当然、今言われたような問題は世界で通用する話だと思いますが、しかし、エネルギー、日本は資源小国でありますし、私はやはり選択肢は多い方がいいと思っていますので。だからといって、原子力をなくせという話ならば、世界に四百四十基原子力があるという現実を考えたら、世界の人たちはやはりその中でいろいろ選択をしているというのが実態なんじゃないか、こういうふうに思いますので、直ちに先生の意見に私は賛成はできません。


○山崎委員 石橋参考人に。

 資料の中で八ページ、組織の利益を最優先させる組織依存のマインドセットがあるという事故調の引用をされました。私は、まさに今原発がこうやって動こうとしているのは一番ここが大きいのではないか、もちろん、いろんな合理的な判断というのは余地はあるのかもしれないけれども、一番大きいのはここだと思うんですが、御見解をいただけますか。

○石橋参考人 ありがとうございます。

 今御引用いただきました、今日の資料の八ページ目の四角で囲んでいるところは、原子力発電の問題にかかわらず、日本中で様々な不祥事とかが起こっていますけれども、全てに共通しているところだと思います。飲み屋に行けば、テーブルごとに事故原因があると思います。

 今日の先生方の御議論を聞いていてまず思うのは、一番初めに私が御質問さしあげた、実施計画の策定の御議論はどこまで進んだのか、国民に対する進捗状況の公表はどこまで進んだのかということについての御議論、御質問、御報告のようなお言葉、一言もないというのが、まさにこの四角に書いてあるところではないかというふうに思います。

 以上です。

○山崎委員 ありがとうございます。

 我々の、超党派で原発ゼロの会というのがあって、事故調の準備会をずっと開いておりまして、今も、いまだに準備会であります。そういう意味では、国会、何もやっていないわけではなくて、サボっているわけではないんですが、残念ながら、先ほど足立さんのお話もありました、まだまだ我々の力不足ということだと思いますので、大いに反省をしながら、是非、国会事故調再開を目指してこれからも活動していきたいと思います。

 今日はありがとうございました。


○渡辺委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。

 参考人各位におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、誠にありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時五十八分散会