HOME  作成 佐藤敏宏
      
聞き語り記録 
 辻琢磨さんに聞き語る (SDL2018最も若い審査員)
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 07 一位を決めた時 
    卒業設計で何すべき 


 07

一位を決めた時

佐藤:中田先生の票の移動は理解しにくかったけど慎重だったね。学生のリアルを厳しくチェックするという姿勢は浮かんでいた。ファサードの回転はリアリティーが無さすぎたので票をはがして、建物語に移っんだと思う。門脇審査員は小さい丸を大きい丸に置き換えての決戦投票だから一貫している。辻さんは決戦時に「動く」に投票した

僕は、明確に行きましたよ。 ダントツで「動く」は好かったですね。それは10案の中で相対的に考えると、一位かなって。「建物語」と二つで比較したらダントツで「動く」方が、ちゃんと建築を拡張しようとしている気概は感じましたね



佐藤:一位を選ぶ審査員の過程が興味深いよ。赤松審査員がリアルティのある作品じゃなきゃダメだと言い始めた瞬間、一位の彼が「360番 私の評価軸」を語ったんだよ。

:それはけっこうおもしろかったですね

佐藤:絶妙なタイミングでした。「一位ならなくって全然よくって、一位とっても建築家になれるわけじゃないし」という発言を審査員に向けて発射した。ここで一位への流れは一気に決まってしまった。彼は自分で勝利を手に入れたんだね
持って行った感じはありますね。確かに
佐藤:意図しているかどうかは分からないんだけど、一位を手に入れた(渡辺顕人聞き語り録

:素でやっているんじゃないですかね。はははは 素でやっている感じはしますけれどね。はははは

 しばらく記録を見ている辻

青木さん、ちゃんと言っているんだよなー。

佐藤:そうだね。質問の姿勢も審査基準同様に

刺激的なものが僕には面白いです。つまり僕が知らない事っていうのかな、知らない世界を持っているなーと思うもの

 それを探している姿勢で一貫していると思います。各審査員も同様に自分の評価軸をもって語っている。バランスよく工法沖縄の方言動くを選んだ門脇さん。審査の意図は、やや分かりにくかったですか。
:門脇さんは解説者です。
佐藤:ツイッターで


  (絵:#せんだい ツイッター投稿より)

:僕は議論が爆発して一位に成る可能性はあったと思うんですけど。順当にいったら一位じゃないなーと感じてましたよ。

佐藤:辻さん、沈黙して読んでる、ね

自分の発言、気になりますよね。こうやって、ビジアライズされるもの、いいんじゃないですか。分かり易い。量は特に分かり易い。


卒業設計で 何すべき 

佐藤:資料を作って話し合った方が、共有できることが多いだろうと思って、作ってみたんです。見て頂いてありがとうございます。ここから、卒業設計は何をすべきかを少し話してもらって終わりにしましょうか。

それは分からないなー。学生を呼んでこないと。一人一人違いますからね。学生全員やったほうがいい。

佐藤:何かありますかね

辻:難しいなー。

佐藤:「競うべきものではない」と、そもそも順位を決定することに馴染むことなのか
辻:競っても、いいですけどねー。そういう場があって需要と供給があって。そこで成立すれば。いいんですけど無意識にそこに突入するのはよくないっていう事ですね。「どういう態度で向き合えばいいか」っていうの、卒業設計だけじゃないですけどね。「建築全体と、どういうふうに向き合った方がいいか」っていう事かなーと思うんですよ。
佐藤:分からないので聞いてみたいんだけど。
辻:何か言えるかなー。

佐藤:卒業設計と実社会に出て建築と関わっていくことが繋がっているでしょうか

繋がっています。一つ言えるのは、プロジェクトとか、ある表現というか。何か言葉に残しておくででもいいし。形に残しておくでもいいし。
 建築を土壌にした表現っていうのは、一応残る。どういう媒体であれ。残るっていう事によって、未来の自分が影響を受けたり、誰かが影響を受けたり、っていう可能性が出ると

 だから、表現の尊さっていうか。なんて言ったらいんでしょうねー。自分の頭の中にある事を一生懸命、色んな制限を受けながら外に出して、成立させるっていうか。顕在させることの素晴しさをちゃんと実感して欲しい
 社会に出てもずーっと続くことではあるんですけど。そういうのが無い、ツールが無い人もいるんで。表現という、ものを知らないというか。そうすると自分がどういう、ものを拠り所にして生きて来たかっていうのが、基本的にはぶつ切りになって、ふわふわしちゃうとは思んですよね。

 建築以外の表現もたくさんあるんですけど、数ある分野の中で、建築を重点的に勉強した身としては、建築にまつわる表現によって、自分が連続していく可能性が出て来ると。

 他者を巻き込んで世界に存立出来できる可能性が出るっていう事が、いかに素晴らしいかっていうのを実感して欲しい。それは表現の強度って、それに賭ける熱量と比例はするんで

 卒業設計のプラットフォームっていうのは、熱量を吸い取るジェネレーターみたいにはなっているから、ちゃんと向き合える土壌だとは思う。

 コンペとか課題とか、とちょっと違うし。実務にはいったら、勝手にというか、仕事やらないと生きていけないから。ちゃんとリアリティーをもってやらざるを得ないんですけど。その内のプロジェクトの一つになっていくとは思うんです。明らかに強度が違う表現の一つになっているで。


 その08へ続く